白眉最良

中学校教員が書くエッセーのようなもの。

美意識を鍛えるためにもアートを見ることが大事だぞっていう授業をしてみた。【後編】

青紫の波光エフェクト

では前回の続きです。本記事では、アートを通じて「上手さ」ではなく「考え方」や「文脈」を育てることを目的に行った授業実践を紹介します。

 

話の流れが分からない方は先にこちらをご覧ください。

 

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これまでの流れの中でアートを通じて美意識を鍛えていくことの重要性を説明した上で実際の作品を見せながらワークショップを行いました。

 

①どれが1番良い自画像か選ぶ。

いくつかのパターンの自画像を見せたうえで「どれが一番うまいと思う?」と問いました。リアルなもの、明らかに変なもの、といくつかパターンを用意しました。

 

ここで狙っていたのは

 

みんながめっちゃ人間に近いリアルなものを選ぶ

ルネサンスの頃もそうやってより人に近いものに価値があったんだと説明

でもカメラが登場してリアルな絵の価値が暴落してしまった

アンリ・マティスっていう人が書いた鼻筋が青く書かれた奥さんの絵が登場。

この作品は見たものを忠実に書くっていう表現からアートを解放する。よってこういう作品が評価されるようになる。

 

こういう流れにしたかったんですね。

一見よく分からない自画像がどうしてすごいのか理解できるようにしたかった。

 

そのためには写真のようなリアルな自画像に集まってほしかったんですけど。

 

そうはならなかったんですよ。ひねくれ者が多いので、あえて変な絵を選ぶ子がたくさんいた。

 

なので私の反省としてはちょっと見せた自画像が中途半端だったかもしれません。もっと明らかにカメラで撮ったような絵とかそれこそ自画像に見えないような絵を並べればよかったと反省しております。

 

②サイコロをリアルに書く。

次にリアルなさいころを書くように促しました。

 

みんな影を付けたりして頑張っていました。ここで説明したかったのは、平面である以上裏側の保証ができないということ。つまりどんなリアルに描かれたサイコロも裏面に目が書かれていたり、その表面に書かれたものと足して7になるような目であるという証明はできないのです。

 

そこからピカソの「泣く女」の絵を出し、彼が「他視点でとらえたものを再構築する」という自分なりの答えを出してこの問題をクリアしたことを説明しました。

 

ちなみにひねくれものが多いうちの学校では「リアルなサイコロを書け」と言われて最初から展開図を点線で書いて、「ここから切ると作れます」と書いている子もいました。ある意味一番リアルな形だと感じましたし、こういう子こそピカソみたいになるのかもと思いました。

 

また最後にはデュシャンの「泉」という便器をひっくり返しただけの作品を出し、彼はこれまで常識だと思われていた「アートは美しいもの・自分で作ったもの・手間がかけられているもの」という常識をすべて壊し、アートの表現を飛躍的に広げたことを説明しました。

 

このように評価されるアートというのはこれまで常識とされていたものを覆す発想があるのです。それを実現するためにはこれまでの文脈を理解しなければいけません。

 

これまでを知って新しいものを生み出す。この姿勢はどんなジャンルでも同じだと思います。

 

ちなみにこのように考えるとマウリツィオ・カテランのバナナの作品も「アート作品は価値が保たれる」「それによって資産価値が生まれる」という近年求められているアートの価値や常識を壊すものであると言えます。だからあえて腐りやすいバナナを選んだのではないかと個人的には思います。

③作品に物語をつける。

このようにアートとはこれまでの常識を超えてきたものであり、作者たちは自分なりの答えを出すことに必死になってきたことを説明しました。

 

そこで自分なりの答えを出すトレーニングとして最後に作品に物語をつけるワークショップを行いました。提示された絵が何を表すか、どんな状況なのかを5行程度で書いてもらいます。

 

ちなみに選んだのは岡本太郎の「森の掟」。

 

他学年ですがこれまでに何回か扱ったことがあり、私もイメージしやすかったからです。

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結果的にですがワークショップの中でここが一番盛り上がりました。

 

山の中ととらえる子もいれば、海の中ととらえる子もいる。着替え中の様子と考える子もいました。

 

同じ絵なのにとらえ方が全く違う。

 

このことが生徒にとって新鮮に映ったようです。

子ども達の感想

アンケートでは次のような声がでました。

 

「大事なのは上手さより考え方だとわかった」

「写実的な絵以外の価値がわからなかったけど、誰もやったことのない描き方やその人独自の表現をした作品だからすごいことがわかった」

「エリートほど美意識を高めるべきという考えに納得した」

「アートを作る画家達の新しい答えを作っていく姿勢こそが現代社会に必要なのかもしれない」

 

難しい部分もあったと思いますが、大方私が伝えたかったことは伝わったのではないかと思います。正解を求める仕事だけでなく、自分でそれを超える力が求められる社会になっていることを感じ取った結果だと思います。

 

個人的に「美意識」や「アート」が共通言語になったと思いました。

 

机の中がぐちゃぐちゃな子を見て「美意識ないわぁ」「現代アートじゃ!」というやり取りをしている子達がいました。

 

また今後は生徒指導の場面でも「美意識もってね」といえば「ルールだけじゃなくて自分自身で線を引いてね」「大人になる前にそれができないと困るよ」というメッセージとして伝わります。

 

なので個人的にはいろいろと反省はありますがやってよかったと思います。

 

今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。読んでいただき、ありがとうございました。

 

【この授業の参考文献について書いた記事はこちらから↓】

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