さて、今年もハロウィンの時期がやって来たわけである。
以前にも書いたように、昨年コスプレコンテストを見た我が家は今年は出場を決意。
一年越しのコンテストを心待ちにしていたわけである。
しかし、どうか。待てど暮らせど、イベントの情報が出てこない。
なんと、去年見たイベントは今年はもうやらないことが判明したのである。(さすがローカルイベント!)
慌てて別のイベントを探し、同じようなものを発見。事前申し込みが必要な、より大規模なものへの挑戦が決まったのである。
こちらの大会は、優勝賞金は1万円。2位で5000円と金がかかっていた。
張り切った妻はここでの優勝に向けて、現代版「母さんの夜なべ」を1週間ほど続けた訳である。
その仕上がっていく過程を見ながら、私は身内ながらなんと計算された戦略だろうかと、妻のその発想に驚かされた。
私もアイディアを出していたのだが、そこまでの発想が自分の中から出てこなくて、そのクリエイティビティーに悔しさすら感じたのだった。
「これは優勝できる…」
そう確信して、何もしていないくせに私は丹下段平のような気持ちで会場に向かったのである。
コンテスト当日も妻に抜かりはなかった。
朝から一歳の息子の昼寝時間を逆算し、コンテストの2時間前に起きるように設定。コンテスト中にベストな状態で臨めるように細心の注意を払う。
さらにお腹が痛くならないように、アイスなどの冷たいものを子どもに一切とらせない。また直前でドラッグストアでお菓子を購入。困ったらこれで子どもの気を引く作戦である。
ここまでくると、もはや、やっていることがアスリートである。私も直前まで息子の機嫌が悪くならないようにセコンドとしてあやし続けていた。
集合時間になると駅前の広場には続々と参加者が集まって来た。司会は地元ではよく知られているローカルタレントである。
きたろう、マリオカート、さかなくん…。前回のコンテストと違い、明らかにどの参加者も仮装に手がかかっている。
特に私が警戒したのはマリオカートだった。
全員マリオの各キャラクターのコスチュームに、ダンボールで手作りしたカート。家族で参加する姿はなんとも愛らしく、我が家が負けるとしたらこの団体芸のパターンだろう、と私は事前に予測していたのである。
最初に司会から説明があったのだが、ここで我が家は出鼻を挫かれる。
今回のコンテストは1分間のアピールタイムがあるというのだ。しかもここでは司会は話しかけることが出来ず、さらにここでの「躍動感」も審査基準になるのだという。なんだよ、躍動感て。
司会とのトークを想定し、娘にセリフを仕込んでおいたのでここで大いに慌てる。
結局1分間は何をするのか十分に打ち合わせができず、コンテストがスタートした。
順番に子ども達が可愛らしいコスプレ姿を披露していく。中には側転を繰り返している子もいて、「あれが躍動感か…」などと思ったりした。
私が注目していたマリオカートは最年少と思われるルイージがグズグズ。ステージに上がろうとせず、なんとなく微妙なステージパフォーマンスとなった。チャンスである。
かくして12番の我が家がコールされたのである。
ちなみに我が家の仮装は地元のゆるキャラand地元で有名なアイドルというもの。
ニッチな選択であるが故に手作りであることがよく伝わる。更には、地元民としてはどうしても応援したくなってしまう仮装を妻はチョイスしてきた。黒田官兵衛ばりの軍師である。
1分間のアピールタイムが始まると、息子はここで怖くなったのか、ステージ上で大号泣。
さらにみんなから「頑張れー!」と応援されると怖くなって更に声をあげて泣く。
さらにはステージ中央で衣装をはぎ取って投げ捨てるというパフォーマンスを披露した。
下で見ていた私はこう思ったのである。
なんて躍動感…
躍動感しかない…
と。
とにかく会場は一番その瞬間が沸いたのであり、私は優勝を確信した。
そして結果発表の時。
結果はなんと…
2位。
正直私からすると信じられない結果だった。
優勝は、人生で初めて着ぐるみを手作りしたというチップとデールだった。
ただし、これについてはどこまでが手作りかは非常に怪しいと思って見ていた。頭に被る面はどう見ても既製品である。
だから、
「手作りの定義ってなんですかね?」
「家で溶かして固めたら手作りチョコレートなんですかね?」
「カカオから作って初めて手作りですよね?」
思わずそう抗議したくなったくらいだし、これがアーティスティックスウィミングだったら、500スイスフラン払って再審の請求をしていたと思う。
何もしてないくせに人一倍悔しがる私をよそに官兵衛(妻)は「また来年頑張るわ」と言いながら5000円をゲットしたわけである。
ハロウィンにこんなにアツい戦いがあったのかと、私は新しい世界を見ている気持ちになった。ステージに子ども達が出ていくときには何もしていないクセにドキドキしたくらいである。
かくして今年の戦いは終わった。来年は一体どんな戦いになるのだろうか。
下で見ていただけの私は今からワクワクしているのである。