白眉最良

教員が書く日々のあれこれ。

人生という舞台では踊る側に回ろう。


ようやく暑さも少し落ち着いて来たかなって感じなんですけど。

 

同時に私としては今年も一番嫌な思いをする季節が来たなって感じだったんですよね。

 

というのもこの時期って文化祭シーズンじゃないですか。

 

文化祭と中学と高校で全くカルチャーが違うから、うちみたいな中高一貫だと意見の調整が難しいんですよ。

 

私は生徒指導主事として中学側の意見をとりまとめて高校側に示してこないといけない立場なんで、毎年この意見の調整にかなり苦労していて。毎回嫌な思いをしてきたんですよ。

 

まず、それぞれがどういうカルチャー持ってるのかっていう話なんですけど。

 

中学の文化祭は働き方改革の流れもあってどんどん縮小傾向にあります。もはややめているところもあるくらい。その内容も学習成果の発表がほとんどで、保護者にのみ公開っていうのが中学の文化祭なんですね。

 

一方で高校の文化祭は各校に伝統があって、縮小の気配が全くありません。(特に偏差値が高い学校ほど派手にやりますし、生徒達もそれが目当てで志願して来ているので変えるのが難しい現状があります)

 

さらに模擬店の運営やら部活動の発表だったりと、お金もかかっていて、かなり大がかり。地域を巻き込んで一般の方にも公開するものになっているわけです。

 

このように全く違うものなんですよね。

 

もちろん、中学生からしたら、高校みたいな文化祭をしたいわけですね。派手だし、非日常的だし。

 

ただ、教育関係者の中には高校の文化祭の教育的意義を疑問視している人は少なくないわけです。そもそも高校の文化祭は学習指導要領から逸脱している感が否めないんですね。

 

文化祭は学習指導要領でいう「文化的行事」にあたるんですけど、そこには

 

「平素の学習活動の成果を発表し,その向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするような活動を行うこと。」(学習指導要領 特活編 より)

 

とあるんですよ。

 

こうなると、買ってきたお菓子とかジュースを販売するのがなんの学習活動の成果なんですか?っていう話が出てくるわけなんですね。

 

一応、「いや、これは家庭科教育の延長」「家庭科では販売についての記載が教科書にある」っていう反論もあるわけなんですけど。

 

でも、

 

日頃適当にやってるくせにこんな時だけ家庭科を都合よく使うな

 

って話じゃないですか。(私高校の時に家庭科の授業抜け出してみんなでサボったのを今でも覚えてます。あの時はすいませんでした。今さら反省しております)

 

また本校の文化祭では「メイド喫茶」なるものを高校生が運営したりするんですけど、それが果たして教育上相応しいのか、また防犯面でも心配な部分があるので、そこに眉をひそめる人は少なくないわけですね。

 

(中学生に「あれ私達もやってみたい」とか言われても、さすがに困るわけですよ)

 

いわば中学は学習発表会、そして高校はお祭りなんですよ。

 

高校としては中学生も含めてお祭りをしたいと思ってるから、我々が学習発表をやらせてほしいと提案すると、「あいつら頭固くてつまらんわ」「一緒に祭りを盛り上げる気とかないわけ?」となりがちなんですよね。

 

だから例年、中学生のフロアが学習発表。そして高校生のフロアが模擬店みたいな文化祭で、本校の文化祭はここに分断があったわけです。

 

当然一般のお客さんは高校生の方に流れて、中学のフロアは来ても保護者。高校生が中学生の学習発表を見に来ることもほとんどありませんでした。

 

この状況を解消したくて今年私は、中学生も無料でできるようなアトラクションを一つ、そして学習系の発表の部屋を一つ(3学年で計6部屋)を運営することを高校側に提示する前に中学の先生方にまず提案したんですよ。これなら中学と高校の文化祭の中間をとれると考えたわけですね。

 

しかしこれが、

 

 

大反発

 

だったんですよ。教員の負担が大きいと。

 

学習の成果発表だけで手一杯なのに、さらにアトラクションの運営となるともう夏休みもロクに休めないっていう返答だったんですね。

 

そこで私は、各学年で学習の発表の部屋を一つ運営してもらって、従来の中学校の文化祭の流れを残す。

 

そして残った部屋で

 

有志を募る

 

っていうことにしたんですね。面白いことやってみたいやつ、教室借してやるから出て来いやと。

 

そしてやりたい子達は担当教員を自分で見つけるっていうやり方を取りました。

 

これによって教員側も協力してもいいよって言って納得してくれる人が携わる形にしたんです。実際子ども達は頼んでも色んな理由で断られていたんですけど、これもいい経験だと思うんですよね。世の中応援してくれる人ばかりじゃないですから。

 

有志として手を挙げて、さらに担当教員もつけられた子達には、オーディションという形で私が甘い点をつめました。

 

「お化け屋敷って面白いけど、これ走って追っかけたりしたら怪我人でない?そこらへんのリスクヘッジって考えてあるわけ?」

 

「これ多分人気出ると思うけど、暑い中廊下でお客さん待たせるの?30分くらいなら待っても大丈夫っていうさっきの発言のエビデンス示して欲しいんだけど」

 

もはや完全にマネーの虎のイメージですよね。中学生相手に甘い点をガンガンつめさせていただきました。(こういう時はカタカナを多用したくなるから不思議ですね)

 

結果的にですね、めっちゃ優秀な学生たちですから、自分たちで足りない所どんどん修正してくるんですよね。チケットを配って時間になったら来てもらえるように工夫したり、お客さんの手荷物預かって中で物品が無くならないようにシステム構築したり。

 

こういう取り組みもあって今年はすごい数のお客さんが中学生フロアに来てくれたんですよ、高校生も含めて。

 

その流れで中学生の学習の発表も聞きに来てくれて、中学生の発表にコメントくれたり。

 

また来年受験を考えている小学生達がこんな学習ができるんだって目を輝かせて聞いてくれて、やってる側の子ども達もめちゃくちゃ良い顔するんですよね。お化け屋敷なんて中から叫び声上がるたびに扉に耳当てて運営してる子達みんなで喜んでましたからね。

 

私はそれがもう、とにかく嬉しかった。

 

私自身、この形に整えるまでに3年かかりましたから。そう、こういうことがやらせてやりたかったんだって改めて思いました。こういう子ども達の顔が見たかったんですよ、私は。

 

そんな感じでとても良い文化祭になったんですけど、中でも私が一番感動したのは高校生たちが運営したラップバトルだったんですよ。

 

というのも私、初めてもった学年がなかなか大変で…。頭は良いけどなかなか話が入らない子達が多かったんですね。

 

特にその中心にいた子達が高校生になって文化祭の中で初めてラップバトルなる企画をして自分たちで一番人目があるステージで運営したんですよ。

 

これ当時の担任の先生もなかなかとがった人で。学活でラップバトルしちゃうような人だったんですけど、当時の担任と生徒が4年越しに一般のお客さんの前でラップバトルしてたんですね。

 

これがもうめちゃくちゃ盛り上がってた。

 

正直悔しいというか、あまりに盛り上がってたんで私も出たかったとすら思いました。(ラップやったことないけど)

 

それぐらい観衆がめちゃくちゃ盛り上がってたんですよ。なかなか大変な子達でしたけど、私はやりきったその子達がめちゃくちゃ充実した顔してて、なんかすごいいいもの見たなって気になれたんですよね。

 

ということでタイトルの回収なんですけど、今回すごく思ったのはやっぱり祭りってのは踊ってる奴が一番楽しいんですよ。見るでもなくて、買うでもなくて、運営する側が一番面白い。

 

いろんな場面で必死に取り組んで、それを披露したあとの子ども達の充実した顔見てたら、

 

「俺は今何を頑張ってるんだろうか?」

「高校の時みたいになんかに熱中出来てるか?」

 

ってすごく思わされましたね。

 

人生という舞台では踊る側に回ろうと思わされた文化祭でしたわ。

 

今年で38のおじさんですけど、こういうの好きなんでしょうね。

 

子ども達からエネルギー貰えるいい仕事だなって改めて思いました。

 

さぁこれから自分は何をしようか、子ども達に負けないように頑張ろうと思います。

 

長文読んでいただいたことに感謝です!

 

ありがとうございました!