昨日の続きです。
ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
- 作者: 楠木建
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/05/10
- メディア: 単行本
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昨日こちらで
優れた戦略とは「一見して非合理」だと書いたわけなんですが,
私が長年やってきたバレーボールというスポーツでもまさしくそれが言えるんじゃないかと思ったので書いておきます。
バレーボールの強豪校に下北沢成徳っていう高校があるんですよ。
何回も全国制覇しているような学校で。
最近だと全日本のエース石川真佑なんかも輩出している日本一の名門校です。
そしてこのチームの一番の特徴が
レフトオープントス
っていう攻撃なんですね。
つまりネット左側にやたら大きいパスをどーんと上げてどかーんと打つっていうバレーボールなんですよ。
これまさに「一見して非合理」な戦略だと私は思うわけです。
というのもオープントスというのは高いトスで打たれるまでに時間がありますからブロックがつきやすいんですね。
現代バレーはどんどん高速化していて,いかにブロックがつけない状況を作るかっていうのがトレンドです。
そんな中にあってこの学校はあえてブロックがつきやすいトスで勝負しているわけですから,一見して非合理な戦略と言えるわけです。
報道なんかではそれを補う徹底した自主練や筋トレの様子がクローズアップされるんですけど,(確かにすごい)
私自身はこの戦略の真の狙いっていうのは違うところに出てるんじゃないかなと思っているわけです。
というのも監督の小川良樹監督はこのオープントスに頼る戦術について
「高校を卒業して日本代表になった時に世界の高い二枚ブロックに囲まれても打ち切れる選手を育てるため」
と発言しているんですね。高いトスを打ち切る練習をすることで世界で戦える選手が育つと。
この発言から私が考えたのが何かというと,
世界で戦いたいと思っているレベルの子がこの学校を選択するから有利になる
ってことなんですよ。
これこそがこの戦略の一番の部分なんじゃないかなと。
ここは東京という人口が多いところの学校です。つまりオープントスという非合理な戦略を続けることで将来の世界レベルの選手が関東近郊から獲得しやすくなっているというのが一番の強みではないかと私は思うのです。
(更に先輩方はすでに世界を相手に戦っているという歴史もありますから,説得力もあるわけです。)
先述したように戦略とはストーリーですから,例えばこれで他のチームが下北沢成徳を真似して
「うちもオープントス一本で行こう」
「大きいトスを打ち切ろう」
といっても当然ながら勝てるはずがありません。
下北沢成徳のストーリーと自分たちのチームとではストーリーに繋がりがないからです。続けたところで弱小校では当然良い選手も獲得出来ないでしょう。
つまり強いチームを作ろうと思ったらスポーツにおいても文脈に合わせた独自のストーリーを作る必要があるのですね。
(続きます)