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【教育現場でも使える】『影響力の武器』から学ぶ、子どもを動かす6つの心理テクニック

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今回はロバート・チャルディーニ著『影響力の武器』を読んで、教育の現場にも応用できるのではないかと感じたので、その内容と教育への展開について考えてみたいと思います。

 


この本では、セールスマンや勧誘のプロたちが「人にイエスと言わせるためにどんな心理テクニックを使っているか」が解説されています。

 

つまり「人が承諾する仕組み」がテーマになっているのです。

 


教育も、ある意味で「子どもにやりたくないことをさせる営み」です。

 

勉強に取り組ませたり、トレーニングを続けさせたり、不登校の子を学校に戻したり——これらはすべて、子どもの承諾を得ることが求められます。

 

そう考えると、この本で紹介されている6つの心理テクニックは、教育現場でも十分応用可能だと感じました。

 

 

1. 返報性の原理

 

人は「何かをしてもらったら返したくなる」という性質を持っています。


本書では、ある大学教授が見ず知らずの人にクリスマスカードを送ったところ、多くの人から返事が返ってきたというエピソードが紹介されています。これは、返報性がいかに強く働くかを示しています。

 

先日、家族で買い物中に試食をした妻が、その商品を買っていたのも返報性のなせるワザでした。食べてしまった以上、お返ししたくなる生き物なのですね。


なので教育においては、「まずこちらから挨拶する」「親切に接する」「明るく対応する」という行動が、子どもや保護者との信頼関係を築くうえで非常に効果的だと言えるでしょう。

 

そういった前向きな態度が自分にも返ってくるのだと思います。

 

2. コミットメントと一貫性

 

人は「一度口にしたことは守りたい」という一貫性を保ちたい生き物です。

 


面白い話として、ある企業がクリスマス前に広告をたくさん打ち、わざと在庫を絞って品切れにする。

 

すると、親はクリスマスには別のものを買いつつ、後日、もともと約束していた商品も買うのです。これは「約束を守りたい」という心理を利用しています。これによって企業はクリスマス後の売り上げの落ち込みを回避したそうです。

 


なので教育でもよくやることですが、目標を書かせて掲示したり、みんなの前で宣言させるなど、「自分で言ったこと」に責任を持たせる仕掛けはこのような意味でも有効だと言えるでしょう。

 

3. 社会的証明(社会的影響)

 

「みんながやっているから自分もやる」——この原理は非常に強力です。

 


テレビ番組に笑い声を足すことで、視聴者が「これは面白いものだ」と認識する現象がその一例です。

 

また手塚治虫のいたトキワ荘がまさにそうで、手塚治虫がとんでもない仕事をこなすものだからそれに刺激されてみんなが仕事ができるようになってしまった。トキワ荘から有名漫画家が次々と生まれたのは有名な話です。

 

 

だから教育でも「できている人がいる環境に置く」ことは大切なのかなと。

 

私は練習試合の相手を選ぶとき、「理想とするチーム」にあえてぶつけています。負けることもありますが、その中で「こんなふうになりたい」という目標が生まれるのです。

 

朱に交われば赤くなるわけですね。

 

 

4. 好意

 

人は「好きな人」「好感を持てる人」の言うことには、イエスと言いやすくなります。

 


その要素として、見た目の魅力や接触頻度が挙げられています。若い先生が子どもたちに人気があるのも自然なことです。私自身も体づくりを意識し、見た目の清潔感や活力を保つよう努力しています。


また、「子どもにとって入りやすい先生」が対応することも大切です。担任だけで抱え込まず、学年主任、保健室の先生など、学校全体での関わりを意識する。そうやって好意を意識するのは戦略として必要なことでしょう。

 

5. 権威

人は「権威あるもの」に無意識に従う傾向があります。肩書きや服装、メディアでの登場などが影響します。

 

大谷翔平が広告に起用されるのもこのためです。権威のある人が紹介しているというだけで人は購買行動をとりやすくなる訳です。


私自身、今の進学校に学校名が変わっただけで周囲の反応が変わったことに気づいたことがあります。

 

また以前はラフな格好で仕事をしていましたが、最近はスーツで仕事をしたり、持ち物にも少しずつこだわるようになりました。

 

交渉の場で「引け目のない自分」でいることが、信頼にもつながるのです。

 

6. 希少性

 

人は「失いかけているもの」や「手に入りにくいもの」に価値を感じます。

 


ある大学のカフェでは、改装によって一時閉鎖したことで、再開後に評価が爆上がりしたそうです。(味は変わっていないにもかかわらずです)

 

教育の現場で言えば、テスト明けの部活や、久々の授業などが該当します。


わざと「やらない期間」を設けることで、子どもたちに価値を再認識させる——そんな工夫も可能ではないかと思いました。

 

掃除や制服も、いざやらなくなって初めてその価値に気づくものです。そうやって意図的に機会を絞るというのも有効なテクニックであると言えるでしょう。

 

 

教育に使える心理テクニック、まとめ

 

返報性:まずこちらから親切にする
一貫性:子どもに「宣言させる」
社会的証明:「できる人」をそばに置く
好意:魅力的である努力をする
権威:肩書や服装に意識を向ける
希少性:「あえてやらない」期間をつくる

 


教育現場は、「教える」以上に「動かす」ことが求められます。

 

『影響力の武器』の内容は、教師のコミュニケーション力を上げ、子どもたちの変化を引き出すための大きなヒントになると感じました。

 


ぜひ、日々の教育活動の中に取り入れてみてください。

 

読んでいただき、ありがとうございました!