白眉最良

教員が書く日々のあれこれ。

中学受験はおすすめしない。

この時期になると中学受験が加熱してるのを感じますね。

 

周りからも中学受験に向けて小学校の中学年から塾に入れるなんて声も聞こえてくるようになりました。

 

ただ私自身、実際に受験して入学する学校で働いていますが、基本的に当ブログでは中学受験をお勧めしていません。

 

その理由をいくつか書いてみたいと思います。

受験しようがしまいが偏差値は変わらない

成田祐輔氏がこんな文章を書いています。

 

マサチューセッツ工科大のヨシュア・アングリスト教授らと筆者の共同研究を紹介します。

 

舞台はシカゴです。この街には入学が難しい有名公立高校が10校ほどあります。これらの学校にギリギリで合格した生徒と、ほんのわずかに点が足りず不合格となった生徒のその後を比べます。ギリギリで受かるか落ちるかは偶然に近いと考える自然実験です。

 

両者の米国版センター試験の成績を比べたところ、有名校に入っても普通の高校に入っても違いがないことがわかりました。有名校の生徒はその学校のおかげで成績優秀なのではなく、そもそも成績優秀な生徒が有名校に入っているだけ、という残念な結論です。

 

ニューヨークやボストンの有名公立高、ハーバード大やエール大のような有名私大でも、成績や収入を伸ばす効果は普通の高校・大学と大差ないという研究があります。

 

有名校に入っても学生の未来が明るくなるとは限らないのです。

 

(成田祐輔・学歴に意味はない より)https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/yasashii28/02.html

 

つまり、入る学校によって偏差値が変わることはほぼないということですね。

 

ちなみに私がいるところだと、落ちた子達が高校では別の進学校に進学します。

 

高校3年の段階での高校の模試の平均点が各校見えてくる訳なんですが、卒業段階での偏差値には大差が見られないのが正直なところです。

 

(そもそも本校を受験していない子も含まれるので単純比較は難しいですが)

 

しかしながら、選ぶ学校によってそこまで高校卒業時の偏差値に差が出るとは私も思えないんですよね。

 

学校の教育どうこうよりも本人の資質によるところが大きいでしょう。

2月の勝者は9月の敗者

こちらの漫画は中学受験について描いたものになる訳ですが、作品の中では受験に向けて不安定になる小学生の心情が描かれています。

 

まだ幼い子供たちに受験が与える映画は大きい訳ですね。

 

また入ってからも偏差値の高い学校で、これまで勉強をプライドに生きてきた子達が軒並み低い順位に叩き落とされる事になります。

 

2回目のテストが終わる9月には少しずつ不登校になる子も出てきます。やはりどれだけ頑張っても他の子に追いつけない、その劣等感はまだ幼い子供たちにとって強烈なストレスになる訳です。2月の勝者は9月の敗者になることもある訳です。

 

これが高校生だったらまた受け止め方も違うでしょうが、ちょっと前まで小学生だった子達にとってはなかなか受け入れ難いでしょう。

 

レベルの高い子達に囲まれるのは刺激になる子もいる反面で、リスクが高い選択であるとも言えます。

学力は教えることでも伸びる

普通の公立じゃ周りのレベルが低すぎて学力が伸びない、なんていう人もいますが、本当にそうでしょうか。

 

学力は教えることでも伸びることが証明されています。

 

慶應義塾大学の亀井憲樹教授らによる研究によれば、能力の高い学生と低い学生でペアを作り、その後の成績がどうなったかを見た実験では、能力の高い学生は足を引っ張られることなく、能力の低い学生の成績が大きく向上したことが分かっています。

 

(参考資料はこちら)

またこれは経験則ですが、教える側にとってもけしてマイナスではなく、自分がどう解くのかだけでなく、他者に分かる伝え方で解くというのは問題を多面的に見て学力を上げていく上では非常に効果的であると感じています。

 

また普通の公立校の方が生徒の質が多様で、障害のある子もいます。そのような場でどう全体をまとめていくのか、認知能力だけでなく、非認知も鍛えられる場が普通の公立の学校だと思うのです。

リスクが高い

また中学受験で入った場合、学校生活がうまくいかなくても、これまでコストをかけてきている分、進路変更がしにくいという問題もあります。

 

せっかく合格したのだから、という思いからなかなか思い切った進路変更を取らない子もいます。

 

普通の中学校ならどれだけうまくいかなくても3年後にはまた入試があって環境が変わります。

 

しかし、うまくいかなかった子にとってはそこからの6年はあまりに長いと言えるでしょう。

金をかけるならもっと早い段階で。

やはり見ていて地頭というのはあるように思えてなりません。

 

教科書を広げてコピーのように一瞬で覚えられる子もいれば、毎日10時間近く努力しても他の子に追いつけない子がいるのが現実です。

 

費用対効果が大きいのは幼児期の投資であることが分かっています。

 

だとしたら子どもの地頭を育てられそうな幼児期にお金をかける。そこから先の小中は普通に公立へ。そこから先のことは本人の学力と本人の希望に合わせてお任せぐらいで良いのではないかと思います。

最後に。

なんにせよ、中高一貫が流行ってきていますが、当ブログではお勧めしないスタンスです。

 

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中学受験が加熱してますが、どう考えても冷静になるべきですね。

 

皆様の進路選択の参考になれば幸いです。

 

読んでいただき、ありがとうございました。