そういえば最近映画を見ていないなと思い、定額見放題の映画サイトに登録してみたのである。
これが面白くて、パソコンから離れることが出来ない。
ちなみに最近見たのが「LEON」である。
色々なサイトで名作として名前が挙がっており,リュックベッソン監督の名を世に知らしめたこちらの作品。
見ながら私も、確かに名作だと思った。
まず迫力のアクションシーン。始まってからずっとこちらを落ち着かせてくれないほど緊迫感がある。
そして何より個性的なキャラクターとそれを支える俳優たちの演技である。
プロの殺し屋を演じるレオン(ジャン・レノ)もそうだが、その殺し屋に教えを請おうとする少女マチルダが魅力的だ。
マチルダを演じたナタリー・ポートマンはこの時11歳である。悲しみを抱えつつも,時折おちゃらけて振る舞い,レオンと心を通わせていくその演技力は圧倒的という他ない。
しかしながら,私の心に最も響いたのは、スタンという男である。
麻薬取締局の刑事でありながら、麻薬密売組織を裏で牛耳る。マチルダの家族を殺したイカレた男である。
この人物はゲイリー・オールドマンが演じているのだが、私は彼のあるシーンが映画の中で最も印象的だった。
スタンが自分の家族を殺したことに気づいたマチルダは麻薬取締局にピザ屋を装って潜入する。
しかし、ここで逆にスタンに捕まってしまうのである。
マチルダを追い詰め、あと一歩で殺すというシーンで、スタンは麻薬をキメる。
そしてこのシーンでスタン(ゲイリー)は、
くるりとカメラに背を向けた
のである。
私は思わず、「なるほどぉ!」と叫びながら膝を打った。
これはつまり、これから人を殺すという最も狂気に満ちた表情を、
あえて見せない
という選択をゲイリー・オールドマンはしたわけである。今どんな顔をしているかは視聴者が想像してくださいね、ということか。
私はそうやって想像する向こう側の顔が非常に恐ろしかったし、このやり方は色んな場面で使えるんじゃないかと思ったのである。
例えば卒業式の時。
「俺は君たちとの別れが辛くてたまらない…」
そう言ってから黒板の方をくるりと向いて肩を震わせる。
するとどうだろう。生徒達は勝手にこちらの表情を想像してくれるわけである。
「先生泣いてくれてるのかな…」
「俺たちのためにそこまで…」
「先生、ありがとう…」
実際には笑っていても良い。実に便利、である。
他にも娘の交際相手が結婚の挨拶に来た時も、一通り挨拶を聞いた上で壁の方に向かってくるり。
「お父さん。泣いてくれてるのね…」
「お義父さんは娘さんのことをそんなにも想っているのか…」
「これは大事にしないと…」
便利、実に便利な「あえて見せない」作戦である。
今後日常の色んなところで使っていきたい。
そんな技を使ってくる俳優達は実に偉大だ。
映画を見ながら、そんなプロの技をこの機会に堪能しようと思っている。