最近、防災意識の高まりをひしひしと感じています。
南海トラフ地震が近いのではないかという報道や、ある漫画が「2025年7月に大地震が起きる」と予言していることで話題になっていることも一因かもしれません。
実際、中国大使館が「日本の不動産購入には慎重になるように」と中国人向けに呼びかけたというニュースもあり、国内外で不安や緊張感が高まっているのを肌で感じます。
学校でも「防災教育」はますます重要になっていくと思います。しかし現場で感じるのは、防災教育が“お題目”になりがちだということです。
「非常持ち出し袋を準備しておきましょう」
「家族と避難場所を話し合いましょう」
正論だけれど、子どもたちにとってそれを“自分ごと”として捉えるのはなかなか難しい。実際、大人でも難しいですから。
そんな中で、私が授業に取り入れてとても良かったと感じたのが「防災すごろく」です。
防災すごろくって?
この教材は私のオリジナルではなく、既に公開されているアイデアですが、非常に優れた教材です。
1マス=1分の移動時間というルールで、自分の現在地からどこへ避難するかをあらかじめ考えておきます。そして、災害発生のシナリオに合わせてサイコロを振り、何分後にどれくらいの津波が来るかを“運命”として受け入れるという流れです。
例えばこんな選択肢が出てきます。
・大切な荷物を取りに一度家に戻るか?
・小さな妹は連れて行くのか?
・川を渡る際に古い橋をいくのか、新しい橋を行くのか。
これらを子どもたちが「ゲーム」という形式で考え、体験する。
すると、「これで大丈夫だと思ったのに巻き込まれた!」というケースもあれば、「うちは家族で落ち合う場所を決めてあるから、すぐに高台に逃げるよ」という子もいて、それぞれの判断の違いが浮き彫りになります。
疑似体験が“命の優先順位”を考えさせる
このゲームは、単なるレクリエーションではありません。
実際に起きた東日本大震災では、高齢者施設の職員が「誰の車椅子を押して逃げるか」という命の選択を迫られました。
二人を同時には助けられない。誰かを選び、誰かを置いていく——そんな選択を現実に迫られた人もいます。
私たちの住む地域や学校も、決して他人事ではありません。
「何を優先するのか」
「どうすれば最善の選択ができるのか」
そうしたことを、子どもたちに考えさせるきっかけとして、この防災すごろくは非常に有効だと感じています。
特別支援から通常学級まで、誰でも学べる教材
この教材を初めて使ったのは、特別支援学級の授業でした。通常の社会の授業が難しい子どもたちでも、このゲーム形式なら楽しみながら参加でき、しかも深い学びがありました。
その後、通常学級でも実践してみたところ、同じように盛り上がり、感想にも多くの学びが見られました。
「家の貴重品をすぐ取れるようにまとめておいたほうがいいと気づいた」
「妹を連れていくか迷ったけど、命を優先する判断が大事だと分かったし、事前に決めておけば迷う時間もカットできる」
といった声が多く、教材として非常に価値のあるものだと実感しています。
ゲームのやり方と準備
授業ではまず、避難ルートを各自で考えさせます。
その後、オンラインのサイコロツールを使って、ランダムに「津波到達時間」や「津波の高さ」を決定します。プロジェクターなどで表示しながら進行すると、視覚的にも理解しやすく、盛り上がります。
最後には東日本大震災において橋に避難したにも関わらず津波の被害に遭ってしまった大川小の児童の例などを紹介し、災害はハザードマップなどの想定を超える可能性があることを補足説明しました。
まとめ:防災教育にこそ「想像力を育てる授業」を
防災は“知識を教える”ことも大切ですが、何より“想像させる”ことが重要だと思います。
「自分だったらどうする?」
「家族だったら?」
「友達がいたら?」
そうした問いかけを、疑似体験の中で繰り返していくことで、ようやく防災が「他人ごと」から「自分ごと」に変わっていくのだと思います。
ぜひ、防災教育に迷っている方は、「防災すごろく」を取り入れてみてください。
きっと、生徒たちにとって印象に残る、深い学びになるはずです。
本日も読んでいただきありがとうございました。