ここ最近の私の関心はもっぱらバレーボールにある。
というのも3月に大会が控えており、まだ一勝もしたことがない自チームをどう勝たせるか頭を悩ませているのである。
ちなみに先日の抽選会で決まった対戦相手は前回大会でサクッと負けた二校+シード校というのものであり、今回も非常に厳しいものとなっている。
リーグ戦で上位二チームが決勝トーナメントに進める。何とか一勝、出来れば二勝して決勝トーナメントに進めないかと雨乞いのように毎日祈っているのである。もう役員として審判だけやりに二日目に行くのは嫌なのである。
身体能力ではどう頑張っても勝てない。だからチーム最大の特徴である「学力の高さ」を最も生かせるようにゲームの分析に力を入れている。
代表的な4つの分析を生徒に教え、それぞれから考えさせている。
①スパイクのコース
前回大会の映像から、相手選手がどこに打って来るのかをすべて書かせる。
こうすることでどの選手の打数が多いか、どこからどのコースに打ってくるのかが良く分かる。例えば上記のような選手はクロスにしか打てないことが分かるので、クロスに一番レシーブの良い選手を置いておけばレシーブの成功率が上がるという算段だ。
②サーブ成功率とレセプション成功率
またサーブとレセプションもデータを取る。
サーブについては
F…フローター
JF…ジャンプフローター
U…アンダー
〇…サービスエース
×…サーブミス
で記録を取る。
1番…JF〇 JF JF JF× JF JF〇
2番…U U× U
3番…F F F F F×
みたいな感じである。
そもそもアンダーハンドサーブを打っている子はあまり身体能力が高くない可能性があるので狙い目である。また打数が多い子はそれだけサーブが安定しているのでタイムアウトをそこまでとっておいてそのサーバーが打って来るときにタイムをとって間を崩すなどの作戦も可能になる。
またレセプションについては
A…セッター動かない完璧なボール
B…セッター動いて二段トスで打てるボール
C…相手コートに返すだけ
D …失点
で記録をつけていく。
当然のことながらCDが多い選手がサーブの狙い目となる。レセプションの苦手な選手は対角になっていることが多いので(特にミドル)その二人を通過するようにサーブを打たせたいわけである。
③スパイクの時のディフェンスの陣形
そしてこちらがスパイクに行くときの相手のフォーメーションも着目させる。
バレーボールという競技はよく出来ていて、コート内の六人の誰かがブロックに飛べばコートのどこかが空くのである。どこを空けるかがチームによって約束事があるのだが、それを見ておくのである。
例えば上の図だと、センターから打っていくときに右手前が空くので、そこにフェイントを放れば決まるという算段である。勝負所になったときにやみくもに打つのか、それとも得点につながりやすい場所にボールを運べるかには大きな差がある。
④自チームのデータ
また自チームのデータも取っている。この前紹介したアプリのタブレット版が出たので、タブレットを生徒に渡して持たせている。
これによって誰の決定率が高く、誰のミスが多いのかをはっきりさせる。データに基づいた最も失点の少ないパターンを探っているのである。
そしてここまでやった結果、練習試合ではどうなっているかというと、
どこに打ってくるか分かっているのに、レシーブが拾えない
相手の明らかなウィークポイントがあるのに、狙えない
いいサーバーが来ると分かっていても連続失点する
分析した自分たちの弱みでそのまま失点する
というどこまでいっても明らかな技術・体力不足に悩まされているのである。他の学校よりも体格も劣るし、そもそも経験者が一人も居ない。データだけでは勝てないのが実情なのである。
ただだからと言ってこれらの分析が無駄だとは思わない。やらなければもっと勝てなくなるだけである。
なにより選手たちがどんな技術をつければ勝ちにつながるのかが明確になればそれに越したことはない。私も最近は心を鬼にして言いたいことを言っている。うちの学校にくる家庭は親も子もかなりデリケートな人たちが多いので、かなりこちらも抑えていたが、最近は気にせず言いたいことを言えるようになってきた。子ども達がそれくらい言われてもついて来れるくらい、バレーに夢中になっているからだ。
そういえば最近、OBが学校に来て後輩に向けて講演をしてくれたのだが、その中で
「中学の時に陸上部の顧問の先生から言われた『東大とインターハイに行ける人になりなさい』という言葉を今も覚えている」
という話があった。
例えどんな結果になったとしても東大とインターハイにいくつもりで努力していれば自分の最大限の力を引き出せると。実際にその生徒は東大もインターハイも行かなかったが、某有名大に現役合格し、陸上でも成果をおさめている。
この言葉を聞いた時に私は、その先生は東大とインターハイに連れて行く自信があったのだろうなと思った。実際にその先生の時の陸上部はかつてないほど強く、県でトップの成績をとっていたこともある。
私はこの言葉から自分自身が「この子達はいくらやっても勝てない」「普通の学校じゃないからこれぐらいで」と思っていなかったかを反省したのである。指導者がそう思っていたら子ども達は絶対にそれ以上伸びないだろう。
子ども達を東大とインターハイに行けるうようにするためには、私自身が東大とインターハイに行かせられる指導者にならないといけないのである。
まだまだ努力をしなければならない。そして努力しなければいけないことがあるというのが、幸せなことなのではないだろうか。
あー、毎日充実してるわ。
そんなことを考えている今日この頃である。