教職者K

教育について考えるブログ。

生徒指導の極意(スキルハンター)

今週、かなり大きい生徒指導案件の山を1つ乗り越えることができました。

 

その上で、この前もちょっと紹介したこの「カタリスト」という本に書いてあることがすごく参考になりました。(本当に読んでおいて良かった)

 

 

なので、この本にどんなことが書いてあるのか、また教育の世界ではどう使えるのか、ということを書いてみたいと思います。

 

 

説得はするな

まず、この本に書いてあることの1つに「説得はしてはいけない」と書いてあるんですね。

 

というのも、人間というのは自分で選びたい生き物だからです。

 

親に「勉強しなさい」と言われた瞬間に勉強する気なくなりますよね。人から言われることがモチベーションを下げてしまうのです。

 

だから、人を動かそうと思う時に説得するっていう形で動かすっていうことがよくないとこの本では書いてあるわけです。

 

選択させろ

じゃあ説得できないならどう人を動かすか、そこをこの本では、「選択肢を示して選ばせろ」と書いている訳です。

 

例えば、不登校の生徒であれば、「水曜日から学校に来る?」「それとも木曜日から来る?」と選択肢を示す。

 

これはどちらも聞いてる事は一緒で、学校に来るって言う結論だけは決まってるわけです。

 

でもその中で、「じゃあ木曜日から来ます」って子どもが選択した場合、これは自分で選んだことであり、自己決定権を持って選択したんだという気持ちを持つことができます。

 

これが「先生から木曜日から来なさい」って言われるのでは、動こうと思う意志の強さが全く違うんですね。

 

なので、そういった意味でも、この説得するのではなく、選択肢を出すってことが非常に重要だと思いました。

 

私はよく家でも子どもに対して、「7時からお風呂?それとも長い針が1になったら?」とかやってますね。

 

相手の話をとにかく聞け。

次に、相手の話を聞いて信頼を育む、これです。

 

これはものすごく重要だと思います。

 

とにかく相手が喋っているときはこちらは聞く。そして話が途切れたら少し質問。新しい質問をしてまた相手に喋ってもらう。

 

とにかく相手に話をさせて、信頼を育むと言うのは非常に重要だと思います。人って信頼してる人間のいう事を聞くものですからね。

 

これを本の中では、「戦略的傾聴」という言葉で書いていました。実際に立てこもり事件の交渉人とかもまず聞くことから始めるそうです。

 

学校の生徒指導の場面で、子供たちや保護者に話をさせるとかなり無茶苦茶なことを言っていたり、過度な要求をされることがあります。

 

そんな聞くに耐えないことでも、「これは解決に向けての戦略的傾聴なんだ」と思うと私はちょっと気が楽になったんですよ。

 

相手がめちゃくちゃ怒っている時でも、うなずいたりだとか、相手の感情に名前をつけて返したりたりする。(「それは辛いですね」「お気持ちよくわかりました」など)

 

そうすると、少しずつ相手の怒りがおさまっていくんですね。

 

なので、まずちゃんと話を聞いて、この人は自分の話を聞いてくれる、信頼できる人間だと思わせる。そのことが非常に重要だと思います。

 

ハードルを下げろ

次に、簡単に試せるようにハードルを下げる、です。

 

世の中には初回無料のものとか、すぐ返品できるものとか、そういうサービスがすごく増えてると思うんですけど、結局それぐらいハードルを下げることによって、まず試してもらい、そこから契約という行動につなげる戦略になってるわけですね。

 

なので学校現場においてもできるだけ簡単に動けるレベルまでハードルを下げてあげるって事は非常に重要かなと思います。

 

不登校の生徒に対しても、すぐに今日1日頑張ろうね、じゃなくて、今日は先生に挨拶だけして帰ろうとか。

 

今日は給食だけ食べて帰ろうとか、とにかくハードルを下げてあげる。

 

そうして、少しずつ少しずつ自分は今日もできた、これぐらいならできるんだって言う感覚を増やしていく。

 

そうやってハードルを下げてあげるってことが、動かすためにも非常に重要だと思います。

 

勉強にしてもそうで一時間やってみようは辛くても10分なら出来るかもしれない。

 

なので、少し動いてみようかなと思えるレベルまでハードルを下げるというのは一つの戦略であると言えます。

 

何もしないリスクを理解させろ。

そして次に、何もしないリスクを理解させるって事が本に書かれていました。

 

例えば海外旅行に行く事を渋っている人間に対して「このまま狭い日本しか知らないまま死んでもいいの?」と聞いてみる。行動を起こさないことがリスクである事を伝えるわけです。

 

今回の私が抱えた生徒指導案件は非常に難しかったんですけども、もしここで動かない場合、相手側はかなり激昂しており、裁判だとかマスコミだとか、そういったものが絡んでくる恐れがあるってことを保護者に伝えました。もうここで方針を変えないと学校が責任を負える範囲から飛び出してしまうと。

 

つまり納得はしてないかもしれないけど、今ここで動いたほうが得だなと感じてもらう作戦だったんですよね。

 

こんな風に何もしないリスクを理解させるってことも人動かすためには重要だと思います。

 

複数の証拠を示せ

そして複数の証拠を示すことも大事です。

 

人はいろんな人から勧められたりとかすると急に興味を持つものなんですね。

 

例えば、友達から「あの映画面白かったよー」って言われて、次の日に違う友人からも「あの映画めちゃくちゃ良いよ」って言われたら気になりますよね。

 

このように複数の人に短期間に同じ事を言われる(=複数の証拠を示す)とそちらに人は動きたくなるようなのです。

 

なので今回の生徒指導の時には、面談の際に私だけじゃなくて担任の先生とか、これまで関わった先生とか、いろんな人に入ってもらったんです。

 

その先生たちがみんなそっちの方向を進めているって事は自分も動いたほうがいいからって言う状況になっていきました。

 

最終的には最初我々の方針に反対していた保護者も話を聞いて、そっちのほうがいいかもしれないとなり、最後は子ども本人もその方向でお願いしますとなったわけです。

 

なので何か説得しなきゃいけない場面とかこちらの方向に変えたいって言う場面では、できるだけたくさんの複数の人間でアプローチして複数の人間で推奨してあげることによって自分から動ける状況になっていくと思います。

 

それがなければ、とてもじゃないけど今回の案件は私一人では動いてもらえなかったと思います。

 

最後に。

そして最後になんですけど、これ今回の生徒指導ですごく学んだことなんですけど。今回のケースは過去に経験がない位難しいものだったんですよ。

 

でも最後には保護者の方から「先生たちを心から信頼しているのでおまかせします。」「この子は担任の先生をこれまでの人生で一番信頼してるんです」って言ってもらえたんですよね。

 

そこからこの生徒指導を成功させる極意みたいなもの見たな思ったんですけど、

 

結局は教員を信頼してるか、誠意のある教師かどうか

 

これが生徒のが難しくなったときにも1番大事です。

 

この人だったら任せても大丈夫って思ってるかどうか。

 

大切な子どもを任せる教員として信用できるか。

 

ここが少しでも曇っていたら、生徒指導はうまくいかないと思います。

 

だから生徒指導ってのは何か起こってからではなくて、日頃の関わり方、日頃十分に生徒と教員の信頼関係がはぐくめているか、これが非常に重要です。

 

信頼関係さえガッチリはぐくめてさえいれば、大抵の問題は大丈夫だと思います。

 

色々書いてみましたが、結局それが生徒指導の極意なんじゃないかなって思いましたので、書いてみました。

 

ちなみに、それでもこの紹介した「カタリスト」という本はオススメです。

 

不登校とかいじめの指導とかにも転用できる部分が非常に多いと思うので、ぜひ読んで見て欲しいなと思います。(時間なければYouTubeの要約動画でも良いかもです)

 

はい、ということで、皆さんの参考になれば幸いです。

 

読んでいただきありがとうございました。