教職者K

教育について考えるブログ。

学歴厨という病。

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うちの学校の子供たちの偏差値重視という考え方には、とても強固なものがあるんですね。

 

とにかく偏差値で人を判断する傾向があり、偏差値が高ければ話を聞く価値がある人だとみなされ、逆に低い偏差値の人は軽視されることが多い。

 

中には全国の高校の偏差値ランキングを暗記してる子までいて。みんなから学歴厨なんて言われてるわけです。

 

そして、子供たちがなぜそういう思考になっているかと言えば、親がそういう価値観を持っているからです。

 

ある教員が保護者から言われた衝撃的な一言がありました。

 

最初の面談で自己紹介をした後に、保護者はその教員に対して

 

「先生はどこの大学を出てるんですか?」

 

と初対面で聞いたそうです。

 

このエピソードは非常に強烈で、その保護者がその教員を学歴で査定していたことを示しています。

 

この教師はうちの子を任せる価値があるのか。その保護者は、親自身が無意識に教師の価値を学歴で判断しているわけです。

 

そのような学歴に執着する保護者のもとで育った子供たちは、学歴や学力に非常に重きを置く傾向があります。

 

確かに進学校を出ることで就職先の選択肢が広がるという事実はあるでしょう。

 

しかし、そのような考え方には弊害もあります。

 

子ども達は自分の学歴に価値を見出すことで、本来の自己そのものを肯定できなくなってしまう可能性があります。

 

さらに、学歴を重視する保護者は、子供に異常なほど勉強をさせ、厳しい環境に追い込むこともあります。

 

実際に教育虐待と取れるほど、過剰な勉強を子どもに課せている親は少なくありません。テストの結果で子どもが親から多大なプレッシャーを与えられているのです。本校でテストの度に不登校の生徒が増えていくのは当然の結果だと言えます。

 

また学力に特化した子育てによって、スポーツや、コミュニケーションなどの場面では非常に弱い子どもになっています。

 

なぜうちの生徒達が学習が得意なのかといえば、それは学習に時間をかけているからに過ぎません。

 

いわばイメージするなら

 

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こんな感じでひたすら勉強というブロックを積んで育ってきているイメージです。【◾️=勉強】

 

一方で普通の学校の子は勉強もしますが、ゲームしたり、家の手伝いしたり、公園で遊んだりしてるわけです。【◯=ゲーム、✖️=家の手伝い、▲=公園の遊び】

 

イメージするならこういう積み方です。

 

     ◯     ▲

◾️◯     ▲

◾️◯✖️▲

 

 

入試というのは学力の早積み競争【◾️をどちらが高く積めるか】ですから、この2つの図を横に並べたときに、学力が高く、競争に勝つのは前者のような時間の使い方をしている子なのは間違い無いでしょう。

 

しかし、この積み方というのは、そこでない能力が求められたときに非常にもろいという側面もあるのです。

 

私がその事を実感したのは京都に行った時です。

 

京都の妙心寺には東大出身の住職さんがいらっしゃいます。

 

とても話の面白い方なのですが、その方は修行を始めた際にはあまりにできない事が多くて、先輩の修行僧から「お前は飯もたけないのか!」「火もつけられないなんて!」とよく怒られたそうです。

 

このエピソードを聞いた時に、私は上の図を思い浮かべたのです。東大を出るような人は圧倒的に学習にかける時間が多いので、家事をしてきていないのです。こういう場面では家の手伝いに時間を割いてきたこの方が強いのは当然でしょう。

 

(ちなみにその住職さんは今は高い学力を活かした面白い話で、たくさんの参拝者を獲得し、さらにラジオパーソナリティーなんかもやってらっしゃいます。なので学力が高いのに越した事はないんですよね)

 

また、こういう学力にばかり特化した育て方は将来的に見た時に非常に脆い気がします。友人関係が築けなかったり、恋愛ができなかったりする。

 

それによって心のバランスを崩して、精神を病んでしまったりしたら、せっかく高めてきた学力を発揮する場面がなくなってしまう。積み上げたブロックがガラガラと崩れていく。

 

人生は長いゲームですから、学校を出た後も学力を高めていけるような土台のしっかりした、多様な体験をする育て方をするべきだと思います。このブロックを安定して積み上げられるような育て方ですね。

 

何にせよ、学力を高めようという姿勢は良い事だと思いますが、行きすぎていてかえって生きづらくなっている子や親が最近とても多い気がします。

 

自分が知らず知らずのうちにそんな学歴偏重の考えによって子供を不幸にしていないか。

 

時折それを振り返ってみてほしいと思います。