教職者K

教育について考えるブログ。

【レビュー」おいしいごはんが食べられますように

さて,最近読んだ本の紹介です。

今回呼んだのはこちらの「おいしいごはんが食べられますように」。

 

芥川賞受賞作ということで,気になっていたので読んでみました。

 

あらすじとしては,二谷という男性と,あんまり仕事出来ないけど料理上手な女性の芦川さん。さらにはチアをやっている頑張り屋さんの押尾という女性が同じ職場で働いてまして。

 

この3人の関係性を食べ物を通して書いた一冊になっております。

 

あんまり書くとネタバレになってしまうんですけど,まずこの3人の関係性がなかなか見ごたえがありました。最後まで「この男はどっちに転ぶんだろう?」っていうワクワク感がありますね。

 

そして読む前の私はタイトルだけ見て料理の描写がやたらおいしそうな小説を予想していたんですけど。

 

それをいい意味ですごく裏切って来ましたね。

 

というのも,

 

 

あんまり料理が旨そうじゃない

 

んですよ。これ新しいなって思いました。

 

それは主人公の二谷が一貫して料理に対して冷めてるからでしょうし,作者もそれを狙って書いてるからでしょうね。

 

芦川さんが作る料理に対して二谷はずっと冷めてるし,美味しさを想像させないような描写であえて書いています。

 

作中でも書かれていますが,「味わいの受け取り方もそれぞれ違う」わけで。みんなで美味しいを共有する必要なんてないんじゃない?っていうすごく冷めたテーゼが作中に込められているんですよ。

 

そしてそんなシニカルなキャラクターの設定が,主人公の二谷だけでなく,芦川や押尾さんや支店長補佐の藤さんにもちりばめられていて。物語が終わった後もこの人たちはどうなっていくんだろうというハラハラ感がありました。

 

なんというか,「食べる」ってかなり人間らしい行為じゃないですか。そこにいやらしさもあるというか。(ほらよく性行為に対しても食べちゃうとかいうじゃないですか)

 

 

そんな「食べることのやらしさ」みたいなところを追究した新しい小説だなと思いました。

 

なんにせよ,食を通した微妙な人間関係は共感できるところもあり,また展開が気になるところもありで見ごたえ十分です。

 

なかなか面白い小説だったように思います。気になっていた方いましたら是非どうぞ。

 

本日も読んでいただき,ありがとうございました!