以前、うちの娘がアンパンマンにはまっているという記事を書いたが、今もそれは継続しているのである
(今やすっかり彼女はアンパンマンなしには生きられない身体にされてしまったわけである…)
私も付き合って一緒に見ているのだが、先日の放送を見ていて考えたことがあるので書いてみたい。
先日の放送ではブック先生と言うキャラクターが出てきて、この知識に溢れたブック先生は「なぜバイキンマンはアンパンマンに勝てないのか」ということを研究し始めるのである。
彼はバイキンマンのアジトを見て回り、その研究の成果に感嘆する。
私も見ながら、どうしてバイキンマンはアンパンマンに勝てないのかを考えずにはいられなかった。
というのもバイキンマンの頭の良さは相当なものである。
奇天烈な発明品の数々。アンパンマンが右ストレートという武器しか持たないのに対して、この武器の多さは圧倒的に有利に働くはずである。
そして何度もアンパンマンに立ち向かっていく勇気、タフネスさ。
どう考えても苦しんでいるのはバイキンマンの方であり、それを工夫で乗り越えようとするバイキンマンの姿の方が主人公に相応しい。
それに、バイキンマンにはアンパンマンのような明確な弱点がないのである。
アンパンマンの場合、顔が濡れると力が出なかったり、カビるんるんによって顔をカビさせられてしまうと力を発揮できないなど、はっきりとした弱点がある。
しかし、バイキンマンにはそのような弱点がない。
一見ばい菌だから清潔なものに弱いイメージもあるが、実は綺麗好きであることもネット上では話題になっている。
(ちなみにこれらの画像は「バイキンマンの自殺」と言われている)
私なりに放送を見ながらずっと考えていたのだが、それは「仲間の有無」ではないかと思ったのである。
バタ子さんやジャムおじさんといったサポートスタッフだけでなく、実は単体でバイキンマンを倒すことができるキャラクターは他にも大勢いる。
カレーパンマン、しょくぱんまん、それらの有名どころだけでなく他にもいろんな仲間が実は自分1人でバイキンマンを倒すことができるのである。
だからどんなにアンパンマンがピンチになろうとも、この人たちが出てくることによって物語の形成が逆転する。
一方でバイキンマンはどうだろうか。
彼には手伝ってくれる仲間がいない。
バイキンマン側としてドキンちゃんとホラーマンというキャラクターが描かれるのだが、実際ドキンちゃんは自分のわがままを言っているだけだし、ホラーマンに関してもけして協力しようとするわけでは無い。
彼らは近くにいるだけで、バイキンマンの戦闘に協力しようとはしないのである。
つまり「仲間の有無」こそが勝敗の決定的な要因になっているわけであり、これは作者のやなせたかし氏からの
「強さをもつことよりも仲間を作れることが大事」
という人生にも通ずるメッセージなのではないかと私は放送を見ながら考えていた。
そのような結論を私の中でだし、果たしてブック先生はこの放送の中でどんな結論を出すのか、それを私はとても楽しみにしていたのである。
そして放送の中では案の定ブック先生の前でバイキンマンはアンパンマンに倒される。
そして最後にブック先生は、バイキンマンがアンパンマンに勝てない理由をこのように結論づけるのである。
それは、
勝ったら終わってしまうからだ」
なんということだろう。
ブック先生はバイキンマンがアンパンマンに勝てないのは、「物語が終わってしまうからです」と結論を出したのである。
私はなんとドライな制作側の意図が反映された答えだろうかと少し錯乱してしまい、嫌がる娘を尻目に、巻き戻してそのシーンを何度か繰り返し見てみた。
しかし、彼は確かに「勝ったら終わってしまうから」と言っているのである。
いや、確かにそうだろう。
バイキンマンがアンパンマンに勝った瞬間にこの話は終わるのである。
(タイトルも「それゆけアンパンマン」から「這い上がれアンパンマン」に変わるかもしれない)
作者のやなせたかし氏は以前、視聴者からの「ドキンちゃんと食パンマンが結婚することはありますか?」
という質問に対して、
「所詮はパンと菌なので、それはない」
と回答していたことがあった。(ドキンちゃんて「菌」だったんですね…)
私はこのブック先生の回答からもそんなヤナセイズムを感じずにはいられなかった。
しかし、だとしたらやはりかわいそうなのは物語の都合上、どうしても勝たせてもらえないバイキンマンである。
いつかアンパンマンに勝つ日が来たら、私は画面の前でばいきんまんと共に泣いてしまうかもしれない。
がんばれバイキンマン。
私はどちらかといえば、君のことを応援している。