さて定期的にこのブログにやってくるアンパンマンの話である。
相変わらず娘と一緒に毎週見ているのだが、ずっと見ているうちに、実はあまり取り上げられないアンパンマンの設定があることに気づいた。
・空を飛べる
・顔が濡れると力が出ない
・困っている人に顔を食べさせる
そういった基本設定に加えて実はアンパンマンには、
めちゃくちゃ演技が下手くそ
というキャラ設定があったことを、皆様はご存知だろうか。
たまに白玉様という白玉をモチーフにしたキャラクターがミュージカルを企画するのだが、その中でアンパンマンはすさまじい大根役者ぶりを発揮する。
怪獣役をやらせると、「がおー」が棒読みになってしまい、まるで迫力が足りない。
挙げ句の果てに白玉様からは
「君に2.3行でもセリフを与えた私が馬鹿だった!」
と言われてしまい、一切セリフのない「太陽の役」などという主人公らしからぬポジションを与えられるのである。
私はなぜ、やなせたかしがこの設定を作ったのかを考えたのだが、それはもしかしたら、演技下手にすることによって「裏表がない、まっすぐな性格」というアンパンマンの性格を際立たせるためかもしれないと思った。
そして同時にそのような知られざる基本設定のあるキャラが他にいないのか注意深く見ていたのである。
そして見つけたのがこのけむり犬というキャラクターである。
(写真右)
けむりいぬは、けむりであるがゆえに様々な形に変化できるという便利なキャラクターである。
乗り物になったり、動物になったりすることで物語にアクセントを加え、時にその能力を使って人を驚かせては楽しむというイタズラ好きの設定である。
そんなけむりいぬには、
「夕方になると消えてしまう」
という基本設定があったことを最近私は知ったのだった。
何故そんな設定をつけたのだろうか。
そう考えてみたのだが、夕方になると消えるという設定が物語にセンチメンタルを与えているのである。
劇中で散々ふざけたけむりいぬが夕方になるとその笑顔と共に空に消えていく。
その姿がどことなく哀愁を感じさせ、物語をいい感じで終わらせるのに貢献している。
深い、実に深い。巧妙に考えられたやなせたかしのキャラクターデザインである。
そんな風に私はアンパンマンの一つ一つのことに感心していたのである。
それに感化されたのだろうか。
最近娘が寝る前に絶賛薄毛進行中の私の髪の毛を触りながらこう聞いて来たのである。
「これ、けむり犬?」
いや、
誰が「夕方になると消える」
だ。
確かに存在感無くなって来てるけども。もう完全に坊主にしたほうが良いのかもと思い始めてるけども。
やなせたかしももちろん凄いのだが、私の髪に「けむりいぬ」という設定をつけた我が娘もまた大したものである。