教職者K

教育について考えるブログ。

みんな新聞読もうよっていう話。

来週から一時的に生徒が登校してくる。

 

保護者からも休み中に何かやるものが欲しいとの要望の声が多く,私の学校でも生徒が登校してきた際に宿題を渡すことになった。

 

プリントをまとめたようなものを出すわけなのだが,ここで何を出すかが難しい。

 

多くの先生がいわゆる「一問一答」的なものを出すのだが,私は前々から述べているようにこれらの効果について懐疑的である。

 

出来る生徒は良い。

 

自分で考え,答えを見てどんどん繰り返し行うことで力を伸ばしていく。

 

一方で中間層〜低学力層はどうか。

 

ほとんどの生徒が問題を見ても分からない。そして低学力の子になると答えを見ても何が書いてあるか分からないわけである。

 

最終的に答えをコピー機のように写してくるか,提出できなくて怒られるかのどちらかになる。

 

なんとか終わらせたとしても,そうやって身につけた力というのはほとんど「コピー機」のそれであり,今後どれだけ磨いても人はコピー機には勝てないわけである。

 

そこで私は春休みの宿題として

 

「好きな新聞記事を切り抜いて,要約と感想を書く」

 

という課題にすることにした。

 

たったそれだけだが,要約と感想を書くには自分の頭で考える必要がある。

 

それでいて,この課題は学力の幅にもちゃんと対応している。難しい子は新聞の4コマでもなんでもいいからだ。自分の理解ができる範囲で記事を選んでくればいいのである。

 

なので普通のプリントよりこっちの方が良いだろうと思ってこの課題を出したのだが,同僚からは

 

「新聞取ってない家の子もいる」

 

「逆に面倒」

 

など散々に言われたわけである。(うるせえ)

 

そもそも私からすると,家に無いとはいえ,100円かそこらの投資なのだから,家の人にも協力して欲しいところである。

 

これで子ども達がニュースに興味を持ったり,少しでも知らない単語を調べたとしたらこの100円はけして無駄な100円にはならないはずだ。

 

しかし,私も優しいので古新聞を大漁に集めておき,新聞をとっていない子はそこから持っていって良いことにした。

 

「なんで新聞なわけ?ネットだとタダだし,もうそれでいいでしょ」

 

とも言われたので,改めて新聞の強みをこの本を参考にして答えを書いておく。

新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

  • 作者:松林 薫
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

新聞ではプロの記者がまずニュースをランクづけする。

 

『これは「5」』とか『こっちは「1」』とかの要領で重要度が決まり,それに応じた段数が記事に与えられる。これにより重要なニュースは大きくなり,そうでもないニュースは小さくなる。

 

更には見出しの文字の大きさなども,重要度によって細かく規定が決まっている。

 

新聞が一目で何が重要なのか分かるように出来ているのは,このためである。つまり一度プロの目を通っているので,非常に効率よく読めるように構成されているわけである。

 

つまり,プロの記者が見て重要だと思ったものが載ってくるのが新聞。

 

一方で素人のアクセスが集まりそうなニュースが載るのが,ネットなのである。

 

つまり,新聞とはミシュラン的で、ネットは食べログなのである。

 

どちらが信用できるだろうか。

 

もちろん食べログには食べログの良さがあるわけなのだが,その格が違うのはいうまでもない。

 

更にネットの収入とは基本的に広告料であるため,アクセスを稼ぐことがとにかく重要になり,国民の関心が高いものを目につく位置に出す必要がある。そうなるとネットでは必然的に芸能人の不倫やら浮気やらをトップにもって来ることになる。みんな下世話な話が大好きだからだ。

 

一方で新聞は定期購読料で成り立つから,そこまで国民の関心を気にする必要がない。新聞の朝刊一面に東出氏の不倫の一件が来ないのはこのためである。

 

更に,ニッチな記事であっても価値があると記者が判断すれば掲載される。昨日私が見た新聞では聖火トーチがいかに変遷してきたのかを一面で載せていたが,新聞ならではの金の掛け方だと思った。

 

そう言った意味でも知識階層ほど新聞を好むと言う構造になっているのだ。

 

皆さんは将来的に子ども達にはミシュランからも店を選べる人間と,食べログからしか選べない子のどちらになって欲しいだろうか。

 

私は前者になって欲しいと思っているのである。

 

ということで,そろそろ休校が明ける気配があるわけなのだが,来年度は新聞を中心に色々と考えてみようと思っている。

 

皆さんにとってもこの記事が「たまには新聞とろうかな」というきっかけになれば幸いである。