教職者K

教育について考えるブログ。

部活を有料にすべきか?

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ツイッターで,

 

「部活を有料化して子ども達から参加費をとったらどうか」

 

という意見をみかけたのである。

 

この意見を見た時,私はそれが出来たらどんなにいいことかと思ったのだ。

 

というのも本来の教師の業務は16時代には終わりなのである。

 

そこから先部活動は18時くらいまでどこの学校でも当たり前に設定されているが、これは完全ボランティアによって運営されている。(高校は20時までとか普通に練習しているところもある)

 

つまり,我々教師は毎日2時間は確実にボランティアで残らなければならないのだ。

 

これは飲食店に例えるなら一旦店を閉めた後に,「すいません,まだいけますか?」と2時間無銭飲食をされているようなものなのである。

 

だから,そこにお金を発生させるというアイディアはすごく良いのではないかと思ったのだ。給料が上がればモチベーションも上がる。

 

 

例えば現在我が家はスイミングスクールに娘を通わせようか目下検討中なのである。(ちなみに私は今も反対中)

 

 

スイミングスクールが大体7000円くらいだから,これを習い事の月額の平均としてみよう。

 

つまり,部員が10人いれば,

 

7000円×10人=70000円の収入増が見込めるのである。

 

毎月の給料にプラス7万円。

 

 

文句ねぇ…

 

もう7万もらえたらどれだけ生活が楽になるだろうか。そんなことを思い,私はこの部活動有料化に当初賛成したのである。

 

 

しかし,だ。

 

考えれば考えるほどこの部活動の有料化というのはデメリットが大きいように思えてきたのである。補足して説明しよう。

 

私はこれまで専門競技であるバレーボールの試合において,子ども達が勝って涙を流すような試合を何回か演出してきた。

 

子ども達は苦しい練習を耐え抜き,

 

そしてチーム内で何度も話し合いを行い,

 

そしてようやく勝てなかったライバル校を倒すのである。

 

 

子どもたちは相手コートにボールが落ちた途端に大号泣。それを見ている保護者もギャラリーで肩を抱き合って泣いている。そういう試合をこれまで何度か経験している。

 

 

試合後,私のもとに集まってくる子ども達。

 

口々にこういうではないか。

 

「先生、ありがとうございました(ぐすん)」

 

「先生のおかげです(ぐすん)」

 

「本当に,本当にありがとうございました(ぐすん,ぐすん)」

 

一通りお礼を言った後,生徒は私に封筒を差し出しながらこう言ってくる。

 

 

「先生,本当にありがとうございました。

 

 

これ,勝てたんで,

 

 

今月は10000円です

 

 

(いつもは7000円)」

 

 

…これ,

 

 

 

台無しじゃないだろうか。

 

 

部活有料化とは極端な話こういうことなのではないかと思ったのである。

 

 

いや,そんな場面で月謝出さないから,という人もいるかもしれないが,結果的にやっていることは一緒である。

 

何だろう、今自分がやっていることというのは実は「無償だからこそ美しさがある」んじゃないかとふと思ったのである。

 

 

いやもちろんお金は欲しい。それはめっちゃくちゃ欲しいのだが,なんだかそれ以上の大切なものの存在をお金で片付けられている気がして嫌かもしれないと思ったのである。

 

そして多分お金を払う以上,もっといいサービスを保護者も子どもも望むはずだろう。ただでさえ,日本の学生スポーツは練習量が多いのに,料金をとったらさらに教師により良いサービスを世の中が求めてくる可能性だってある。

 

 

さらに自分自身を振り返ってみても,自分の教育方針が変わってしまいそうで嫌だと思った。

 

というのも,多分私は部活動が利益になるとわかったら,もっと儲けたくなってしまうだろう。

 

そして利益を上げる,つまり部員を集めるためにはどうすればいいか。

 

一番手取り早い方法は,

 

 

「勝つこと」

 

 

なのである。

 

野球をやっている中学生なら甲子園に憧れるし,バレーなら春高に憧れる。人が集まるところ,お金が集まるところというのは,結局勝てるところなのである。

 

 

なので,もし部活を有料化して利益を得ていいことになったら私は真っ先に「勝つこと」を最優先するようになると思う。そうすれば部員が増えて自分の利益に直結するからだ。

 

しかし,これが無償でやっている今は違う。

 

勝つことよりも生徒の人間的な成長が何より大切だと考えている。だから練習を休もうが,アイドルのコンサートに行こうが私はなにも言わない。バレーだけが生徒にとっての成長の場ではないと考えているからである。生徒がバレーより熱中できるものがあるのなら,そちらを優先した方がよほど人生のためになると考えているのだ。

 

しかし,部活で利益を上げていい,勝つことが利益に直結すると分かったら,そんな生ぬるいことは言えなくなってしまうかもしれないと思ったのである。

 

 

 

つまり,教育活動として生徒の成長を考えた時にはやはり無償で行うということに,価値があるのではないかと思うのだ。

 

 

私は自分が結婚したり,子どもが生まれたりという人生のイベントが起こるたびに,これまで見てきた子ども達の保護者の皆さんがわざわざお祝いを持って来てくれたりしたことがあったのだが,これももしかしたら無償でやってきたからこそなんじゃないかと思うのである。(本当にありがとうございます。大切に使わせていいただいてます)

 

 

ということでこのような理由で当初めちゃくちゃいいと思った部活動の有料化に今の私は反対なのである。

 

みなさんいかがでしょうか。

 

部活動問題を考える一助になれば幸いです。

 

追伸

結局お金の問題じゃないんですよね。仕事が多すぎるんですよ,はっきり言って。せめて顧問やれるかやれないかの希望くらいは聞いてくれてもいいんじゃないかなってのは思いますけどね。今日も読んでくださりありがとうございました!