先日こちらの本を読んだのでご紹介したい。
奥田英朗は私の大好きな作家であり,その作品は全て目を通している。この人の作品は本当に何を読んでも面白いのである。
よって今回も例に漏れずチェックしてみた。
皆様にその内容をご紹介したい。
あらすじ
北海道・礼文島で昆布漁の親方の下で働く宇野寛治は空き巣の常習だった。
空き巣によって地元にいられなくなり、本土に流れ着くと、同じ手口で犯罪を繰り返し、最終的には子どもを手にかける残虐な犯行へと至る。
そんな宇野とそれを追う刑事達のストーリーである。
感想
まずこの宇野というキャラクターが何とも哀しく映る。
犯行が短絡的で計画性も何もない。一般的な小説によくある緻密な計画を練るタイプの犯人とはまるで違い,その姿がなんとも情けないのである。
障害があるため,周りからも子どもからも「莫迦」と言われ続けている。
そしてその障害の原因も父親に過去に受けた仕打ちによるものという哀しさである。
(父親は寛治を車の前に突き出し、交通事故にあわせることで金を稼いでいた)
奥田英朗氏はそんなアンダーグラウンドな世界で生きる一般の人からするとちょっと得体のしれない人達を描くのが凄くうまい。
また寛治は目先の金欲しさに子どもを誘拐してしまうのだが,その誘拐されている子どもの様子は一切描かれず,そのこともまた物語の怖さに拍車を掛けている。
高度経済成長の最中、東京オリンピックの開催を目指す日本を背景にして犯人と刑事達の熱のあるやりとりが交わされる。
そして、宇野寛治が犯罪を繰り返していった後には「罪の轍」が出来ていく…。
全体的にミステリーでありながらも、何とも言えない悲しみが残る作品となっていた。
まとめ
ということで、期待を裏切らずハラハラして面白かったのでおすすめである。
他にも奥田英朗は何読んでも面白いのでこの機会に他の作品も紹介しておきたい。
エッセイなんかも面白い。
興味のある方いましたら、ぜひどうぞ!