(さて、昨日の続きである)
朝早起きし、朝食を食べる前に風呂に入った私は、露天風呂に浸かりながら、「銀色のシャープペンシル」のことを思い出していた。
「銀色のシャープペンシル」とは道徳の教材で、こんな内容の話だ。
主人公はある日落ちていた銀色のシャープペンシルをこっそり自分のものにしてしまう。
そして友人から「それ僕のじゃない?」と言われたことに対してとっさに「自分で買った」と嘘をつく。
そしてばつが悪くなった主人公は後日何事もなかったように、ロッカーにそのシャープペンシルを返しておく。
その後友人から「疑ってごめん」という電話がかかってくる。
この電話で良心の呵責に苛まれた主人公は、オリオン座が瞬く夜道の中、友人の家に向かう…
という話である。
私は、早朝の露天風呂に浸かりながら、まさにその主人公のような気持ちになっていたわけである。
私は風呂に入りながら障子のことは、会計の時に言おうと心に決めたのだった。
朝食はバイキング。朝食はまぁ普通。
なぜか飲み物として飲むヨーグルトをチョイスしてしまったことを後悔する。喉を通らない。
これから多額の請求が来るかもしれないことに怯えながら飯を食う。
そして、朝食後に意を決して会計向かう。会計のお姉さんに向かって言った。
「あの…、部屋の障子に(私が)穴を開けてしまいまして…すいません」
「何号室ですか?」
「467号室です」
「かしこまりました。大丈夫ですよ。こちらで補修しておきますので」
何という寛大さ。この一言で救われたのだった。私のこの時の安堵感と言ったらもう…!
「女性に優しい宿」として評判の宿だが,男性にもちゃんと優しかったのである。
部屋に帰って妻に報告する。
私「俺,正直に言ったよ。障子だけに正直に」
妻「それ言ってたら多分お金取られてたよ」
妻「私なら取るな。五千円」
妻はそう私に言ってきた。どうやらこの人はどんな時も私に厳しいらしい。
しかし,この一件から私が学んだことは大きいように思う。
一つはもっと早く言えばよかったということ。
もっと早く言えば私はせっかくの貴重な時間をこんな憂鬱な気持ちで過ごさずに済んだのかもしれない。
だから,休み明けにはこの経験を生徒達に話そうと思っている。
君たちの気持ち、先生めっちゃよくわかるよ…と。
でも、、だからこそ何かやってしまった時は早く言おうね、と。
荷物をまとめ,玄関で記念撮影をして従業員の皆さんに別れを告げてきた。
晴々とした気持ちで帰路に着く私の頭上では,
オリオン座が瞬いていた。
(↑アホか。)