本屋大賞のこちらの本を読んでみたのである。
あらすじとしては,親がコロコロ変わってしまう子の話。
実の母親は死んでしまい,実の父親もブラジルへ。
継母に引き取られたが,その母親も別の男と再婚し,また離婚して別の男性と結婚する。その人とも別れて,別れた男性側について行ってともに生活している子を描いた作品。
つまり,簡単に言うと,現実にあったら目も当てられないであろう状態の家庭環境の子を描いた作品なのである。
しかしなんというか,主人公に全く悲壮感がない。主人公は飄々としてこの状況を受け入れているのだ。
というのも出会う親出会う親がみんな良い人だからだろう。確実に次の親にバトンを渡し,ちゃんと主人公の面倒を見ていくのである。
私はどうしても,実際にこういう家庭環境の子いたらめちゃくちゃ荒れるだろうな…と思って読むのだが,そうでもなく,むしろ主人公の友人達,つまり普通の家の子の方が心が荒んで見えた。
「実の父親は不潔で厄介」
などと,遠慮もなくいうではないか。(これが私の娘が言うようになったら私はもう立ち上がれないかもしれない)
この作品を読んで,結局愛情をもって育てられれば,人はまっすぐに生きていけるのではないかと思った。
さらにいうと,私はこの作者の目線にどこか教師に似たものを感じたのだった。
複雑な家庭環境という教師だったら見過ごせないところをテーマにする着眼点。
さらには,学校内の様子として合唱コンクールの様子などを描いているのだが,その観察眼がすごく教師っぽいのである。
気になって調べてみたのだが,
この作者さん,元教師なんですね。
(全然知らなかったけど,中学校の国語の先生だったみたいですよ)
この人の作品を読むのは初めてだったのだが,どうりでどうりで,と何だか妙に納得してしまった私。
きっとこの作品の中にもこれまでの教員生活の中で見てきたものが生かされているのだろうな,と思うと同じ仕事についているものとして嬉しい気持ちになるのだった。
最終的なタイトル「そしてバトンは渡された」の意味は読んでからのお楽しみということで。
お時間ある方いたら是非どうぞ。
追伸
今日も読んでくださり,ありがとうございました。やっぱり人の感情とか言葉の表現とかは小説のが勉強になりますね。ビジネス書ばっかじゃダメだと思って久しぶりに読みました。スイスイ読めて読みやすかったです。