さて,春高バレーが終わった訳である。
私もバレーボールという競技に長年関わって来た男なので,今回の大会で私が感じたことを書きたい。
私が一番思ったこと。
それは
「古川学園(宮城)はなぜ勝てないのか」
ということである。
前大会では,バルデス・メリーサという超高校級の留学生エースがおり,更に県外からも良い選手を集めまくった古学だが,決勝で就実(岡山)に敗戦している。
そしてメリーサが抜けた今回はタピア・アロンドラという195センチもある留学生を入れてきたわけである。
バレーという競技は身長が高い方が有利な競技である。よって真ん中に195センチという超身選手がいて常にブロックに飛んでくる状況は最初からかなり有利であり,この選手は決勝でも就実のブロックの上からスパイクを打っている。
にもかかわらず,今回も敗戦を喫したわけである。
私はこのようなことから,「何が古学に足りないのか」という非常にお節介なことに考えたのだが,一言でいうならば
美意識ではないか
という結論に至ったのである。
あの決勝がかかった下北沢成徳との一戦で,明らかなワンタッチをごまかして点数をもらうあたり。
そもそも留学生や県外生に頼るチーム作り。そういう所にいまいち美意識を感じないのである。
「留学生一人じゃだめだから,来年は二人ぐらい入れてみますか」
とか言い出すんじゃなかろうか。極端な話,古学のチーム作りというのはそういう風に見えるのである。
しかし,優勝した就実はどうか。
私は就実の練習を丸二日ほど見学させていただいたことがあるのだが、あれだけ能力の高い子達がひたすらに初心者がやるような基礎練習を繰り返していることに驚かされたのである。
見ている分には地味すぎて面白くなかったが,そこには「基本に忠実に」という基礎へのこだわりと美意識を感じずにはいられなかった。
また決勝のかかった金蘭会(大阪)との試合は相手エースを抑え込む明らかな作戦勝ちであった。西畑監督の采配もまた美学がある。
ヤフーのコメントを見ていると
「岡山の誇り」
「岡山に強かった就実が帰ってきた!」
という言葉がよく見られた。
一方で県外出身者ばかりの古学が優勝した場合,「宮城の誇り」になりえただろうか。
陸上の名門校である広島の世羅高校も地域の誇りであり,道の駅にも世羅高校グッズがたくさん置かれて,売れ筋商品になっているという。
地域からの寄付金なども相当な額になるという。応援された選手は当然力を伸ばす。
そのチームの美意識の差が応援の差につながり,ひいては決定的な結果の差につながっているのではないかと思えて仕方がなかった。
いや,美意識という点でいうならば,今回の大会で私は女子バレー全体に問題があるように感じたのである。
なんといってもどこのチームもユニフォームがいまいち古くさいのである。
伝統だから変えにくいのも分かるのだが,それを置いておいても勝ち上がるチームはどこもショートカットの刈り上げ,という昔ながらのスタイルである。
はたして女子バレーはこのスタイル「ダサいユニフォーム+ショートカット」のままで本当にいいのだろうか。このスタイルのチームが勝ちあがる構造のままで日本バレー界に未来はあるのだろうか。
例えばここ最近で言うと,男子バレーのイメージは大きく変わった。
これまでの高校男子バレーのイメージと言えば坊主頭に鉢巻き,そしてベンチコートだったのである。(これは岡谷工業(長野)がつくったイメージである)
しかしこれを変えたのが,星城高校(愛知)である。
従来のイメージを変えるために坊主禁止。
更にはユニフォームの記載をあえて「SEIJ☆H」として星マークを採用し,それまで他のチームがやっていなかったスタジャンをチームジャージとして採用する。
旧来の男子バレーのイメージを変えようとしたのである。
そしてその中で活躍したのが石川祐希らであり,他の選手も多くがプロの世界でも活躍し,「奇跡の世代」と言われたのである。
だからここ最近の男子バレーのさわやかなイメージを作っているのは,星城高校と言っても過言ではないかと私は思っているし,イメージが変わってきたことでバレーをやってみたいという子が増え,裾野が広がったと感じている。
一方で女子バレーの方はどうか。
あのスタイルを受け入れられるのは実は一部のゴリゴリにバレーをやってきた女の子だけではないか。
だから,そんな改革を試みているチームがもっと出てこない限り,日本バレーに明るい未来はないと思うのである。
私自身もそんな美意識を意識したチーム作りをしていかなければならないと感じた春高バレーである。
読んでいただき,ありがとうございました!
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