先日こちらの映画を見たんですよ。
バットマンの悪役である「ジョーカー」を主役にもってきた作品です。
あんまりアメコミは私の好みではないんですけど,前に「her」を見てからホアキン・フェニックスの演技が見てみたくなりましてね。
ホアキンフェニックスはこの「ジョーカー」でアカデミー賞の主演男優賞も撮っているので,どんなものかと思って見てみました。
見てみて思ったのが,まずホアキン・フェニックスに見えない。とても「her」と同じ人が演じているとは思えませんでした。
というのもこの映画のためにホアキンは23キロのダイエットを敢行。実現するために数か月を毎日リンゴ一個で過ごしたのだとか。そんなホアキンの努力が生んだ演技は言うまでもなく圧巻でした。
しかしながら,私はそれ以上に脚本が凄いなって思ったんですよ。
北野武監督が「映画は数学が出来ないと撮れない」って言ったりしてるんですけど,それをこの作品からも感じたんですよね。
というのも,一人の男が歪んだユーモアをもつ犯罪者になっていく過程を描いた話なんですが,それって普通に考えたらちょっと滑稽じゃないですか。
そもそもピエロのメイクの犯罪者って日常からかなり遠いですし。
見方によっては「そんなやついねぇよ」ってすぐ冷めてしまうと思うんですよ。
でもそうさせずに最後まで見せるのはすごくその過程が理論だっていて,数学でいう「証明」のように理屈でつながっているからなんじゃないかなって。
物語を見ながら「そりゃジョーカーになっちゃうのも仕方ないかぁ…」となんだか納得させられてしまったわけです。
また北野監督は因数分解が映画を撮る際に役立ったとも言っているようで。
例えば三人の人を殺すとして,同じように人を殺していたら見ている人が飽きてしまいます。
だから,一人目は刺して殺す。
二人目は沈めて殺し,
最後の三人目は血が飛ぶシーンだけ見せたりする。
そうやって変化をつけることで見ている側に飽きさせないようにしているわけです。
これは言うなれば,
a(X+Y+Z)
の因数分解みたいなイメージみたいなんですね。
殺人という共通のaをそれぞれにかけていったら,同じものにはならないはずっていう考え方なわけですよ。
そしてこのジョーカーも殺人シーンがたくさん出てくるんですけど,それぞれその死に方が全く違います。
最初の電車のシーンから始まって、同僚に手をかけるシーン…etc
ジョーカーが人を殺すっていう結果は同じなんですけど,その見せ方はまさしく北野監督が言うところの因数分解なんじゃないかなと思いました。
ということで,私は学生が数学勉強するの意味ないって感じてる子もいるかもしれないけど,こういうところに生きるのかもしれないなって思いましたね。
またそんな目でこの映画を見てみるのも面白いかも知れません。
皆様の参考になれば幸いです。
本日も読んでいただき,ありがとうございました!