教職者K

教育について考えるブログ。

私の教育実習の思い出。

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さて,現在教育実習中である。ちょっと前まで教わる立場だった私も人に教えるようになりつつあるわけである。

 

最近では,

 

「実習で教師にならない決断ができた」

「この職場環境は異常」

 

などの大学生の意見をツイッターちらほらみかけるため,私としてはなんとかホワイトな教育実習にしたいと考えているのである。

 

実際19’00までには退勤するように促しているし,以前に比べれば教育実習はだいぶ緩いものになってきていると思う。

 

そして改めて自分の教育実習を振り返ってみるとなかなかに異常だったように思うのである。

 

もう10年も前の話ではあるのだが,私の実習の思い出を書いておきたいーーーーーーーーーー。

 

 

私は出身県の付属の小学校と中学校で教育実習を行ったのである。

 

実習中は敷地内にある合宿所みたいなところで寝泊まりし,一部屋に6人ほどの男が入れられて生活していた。

 

ベッドは二段ベッドで,そこにカーテンを引くことでできる空間だけが唯一のプライベート空間だったわけである。

 

そこで同室だった男達と話をしていると,実習のあまりの辛さから「過去には自殺者が出た」という噂話まで聞こえてきて,私はもう(というか誰もが)この教育実習に怯えていたわけである。

 

そしていざ始まってみると,やっぱりしんどかった覚えがある。

 

まず服装は全員無地の白のポロシャツ。(ワンポイントも禁止。ボタンは一番上まで閉めること)

 

こんな「あたりまえ体操」のような格好で3週間過ごすわけである。

 

さらに実習そものものがやはり大変で,指導案を提出しても何度も何度も指導教官によって訂正が入る。

 

夜中の11時までに指導案を完成させて,そこから学生同士で模擬授業をやったりすることもザラにあった。

 

夜中の12時に実習生同士で組体操のサボテンをやって,そのポイントを考えたのはいい思い出である。(二度とやりたくないが)

 

そして,一番しんどかったのはやはり授業づくりである。

 

付属校であるがゆえに工夫のない授業は許されなかった。

 

「子どもにとっては二度と戻ってこない貴重な授業の1時間」

 

と指導教官から言われ,実習生であろうとも絶対に手を抜いた授業は許されなかったのである。

 

そのため社会の授業では休日も自動車の工場を回ってパーツを集めてくるよう指示され,それを解体して車の構造を見るという授業を行った。

 

さらにしんどかったのは「発問」である。

 

小学校の授業では,

 

「子どもが〝やりたい”と言うまで授業を展開させてはならない」

 

と教わり,なんとか子ども達から「やってみたい」という言葉を引き出せるように何度もその発問を考えなければならなかったのである。

 

実際に行うとこんな感じである。

 

「自動車って何個のパーツからできてるか知ってる?」

「知らなーい」

「じゃあどうしたらわかりそう?」

「車を分解するー」

「ちょっとそれは大掛かりで無理そうだなぁ」

「じゃあパーツごとに分解してみるー」

「いい意見だね。ちなみにここに車のパーツがあるんだけどさ…」

「分解しようよー」

「やってみたい?」

「やってみたーーい!!」

 

とここまできて初めて授業が展開する。この言葉が出てこないと授業が前に進めることができない。

 

だからとにかく必死に「やりたい」を引き出すために頑張るのである。

 

 

もちろん,大学生は素人なのでうまくいかない日も多い。授業が前に進まなくなってしまった時は,指導教官が入って軌道修正したりする。女性の実習生の中にはうまくできないことで涙を流す人も多かった。

 

そして実習の最後には深夜までかかって生徒一人一人にプレゼントを作る。手紙を書いたり,ちょっとしたものを作ったりする。全て終わったのが夜中の1時過ぎだったのを覚えている。

 

結局毎日12時過ぎに寝て,6時過ぎにはおき,慣れない学校生活を一日中送り,夜中まで指導案を書くという生活を三週間繰り返すわけである。

 

 

今思い出すと明らかに異常である。よくみんな文句も言わずにやっていたものである。ブラックもブラック,漆黒である。

 

(ちなみに我々も大変だったが,もっと大変だったのは指導教官だろう。一体いつ家に帰っていたんだろうかと思う。)

 

しかし,その労働環境のおかしさは明らかではあるが,その時教わったことはやはり私の授業のベースになっているのは間違い無いと思う。

 

今の実習生が作っている指導案に対しても「あんまり言わないようにしよう」と思っているのだが,実際に見ると「これじゃ絶対に失敗するな…」と思い,ついつい赤ペンを入れてしまう。

 

現場が嫌にならないようにするためにはどう接したらいいのだろうか,と毎日頭を悩ませながら,実習日誌にコメントを書いている。

 

 

 

追伸

 ちなみに私,指導教官との飲み会行かなくて怒られましてね。「うるせえ,自由だろ」って思ってたんですけど。でも今なら気持ちわかりますよね。めちゃくちゃ忙しい中で指導して,さらに飲み会まで設定したのに実習生来ないって何!?って。ぶっ飛ばしたくなる気持ちもわかるなぁ。生意気クソ野郎でしたね笑 今日も読んでくださりありがとうございました!