2日目は朝から「美ら海水族館」へと向かった。
高速を使っても片道一時間半。思っていたよりもずっと遠くて、なかなか辿りつかない。高校の時も行ったが、自分で運転していくとこんなに遠かったのかと思った。
しかもこの日は朝から大雨である。到着しても立体駐車場から大量の雨が流れ落ちてきた。
そこまでしてようやく着いた美ら海水族館の感想は「ジンベイザメでかい」「水槽でかい」くらいのもので、修学旅行の時に見て感じたこととほぼ変わらなかった。自分の生物に対する関心の低さが子どもに遺伝しなければ良いと心から思った。
雨の中で開催されたイルカショーは開始5分で娘が「もう帰ろうよ」という提案をしてきた。私も帰りたかったのでちょうど良かったと思う。ビバ遺伝子。
帰り道では、辺野古のあたりで大型車が大量のコンクリートを海に運び込ぶ様子を見た。
大雨にも関わらず、入り口には何人もの人達がいて、厳重な警戒体勢を伺わせた。フェンスにはたくさんの反対の張り紙がされており、沖縄はけして理想郷ではないのだということを考えさせられたのだった。
また高速では派手に事故っている車も見た。前方がぐしゃぐしゃに潰れて、エアバッグが飛び出している。
止まっていたパトカーには「police」とデカデカと書かれていて、アメリカの警察が事故の対応をしていた。
こういう事故は一体どう処理されるのだろう。
アメリカ人が事故を起こした場合、ちゃんと処理してもらえるのだろうか。アメリカの都合の良いようにうやむやにされてしまったりしないのだろうか。小心者の私はそんなことばかり考えてしまう。
そしてそんな風景の端々に、自分が日頃、常識が常識として通用する範囲に住んでいる事は、案外幸せなことなのかもしれないと思うのだった。
そんな道中だったが、沖縄の自然の中を運転するのは気持ちが良かった。
ラジオをつけるとオール英語のラジオが自然とつながり、アンディー・グラマーの「ハニーアイムグッド」が流れてきた。好きなんですよね、この曲。ちょっと浮気っぽいけど。元々好きな曲だったが、沖縄の雰囲気とマッチしてとても気持ちが良い。
洋楽 和訳 Andy Grammer - Honey I'm Good - YouTube
洋楽を聴きながら、気持ち的にはノリノリのままホテル方面へと戻る。
ちょっと遅くなってしまった昼飯は妻の希望もあってA&Wなるハンバーガーショップへ。
なんでも日本のファストフード店の走りらしく、それぞれが駐車場に車を止めながらドライブスルーで注文できるという本土では見た事がないシステムだった。
しかしながら、せっかくここまで来たので、今回は店内にて注文。
特に気になっていたのがこのルートビアなる飲み物である。
この店の名物らしく、店内だとおかわり自由なのだそうだ。
元来ケチな性分であり、更にははるばる沖縄まで来たこともあって、「三杯は飲んじゃうかもな…」と私は意気込んでいた。
そして、実際に一口飲んで思ったのである。
「え?!なにこれ?湿布飲んでる?今のどに湿布突っ込まれた?」
日頃食べ物に対して文句を言うのは、良くないと思っているので極力ネガティヴな発言は控えている私だが、この時は思わずそんな言葉が出てしまった。
なんというかとても薬っぽいのである。
部活で散々サロンパスに親しんできた身としては、サロンパスを口の中で噴射されたような味というのが一番良い表現だと思う。(サロンパス飲んだことないけど)
本当にこんなサロンパス味の飲み物を沖縄の人たち飲んでるのか気になったので、ググってみたら「3回飲めば慣れる」と書いてあった。
3回飲むのか、これ。一回で十分だろというのが私の感想である。沖縄の人達もしかして喉に怪我とかしてませんかね?喉捻挫してませんか?
沖縄の人たちの喉の怪我を気にしつつ、もう2度と飲まなくていいわ、思いながら店を出る。
そういえば娘(5歳)が全く食が進まなかったので、ずいぶん元気がないなと思っていたら、駐車場でいきなり盛大に嘔吐。
どうやら先日からの長時間移動でかなり疲れが溜まっていたらしい。子どもの体調は疲れに素直に反応するのである。
ルートビアには薬草が使われているらしいので、今こそルートビアを飲ませるべきではないかとも思ったが、余計に吐いてしまいそうなのでやめておいた。
娘の体調が悪いため、もう夕飯は外に出られそうもないので、A&Wの駐車場で持ち帰られそうなものを夕飯としてドライブスルーで注文。思いがけずドライブスルーまで利用する形になったわけである。
帰っても娘は嘔吐を続けていた。少しでも口に入れると数分後には全て吐き出す。
そして妻の携帯は実家からの電話がひっきりなしに来ていた。
なんでもニュースで沖縄が100年に一度災害級の雨に見舞われていると報道されているらしい。
ここで我々は初めてテレビをつけるのだが、私達がこの1日で通過した市町村は軒並み注意報が出て、避難勧告まで出ているところまであった。
こんな日に美ら海水族館まで行っていたのかと考えると恐ろしかったが、当人たちは呑気なものなのである。「知らぬが仏」とはこの事かと心から思った。
そうこうしている間も娘は一口水分を含んでは吐き続けている。
子どもが夜中にベッドで吐いてしまわないか。
その事だけを気にしながら、2日目の夜が終わっていくのだった。