子ども達にはさんざん言ってるんですけど。
頭がいいとか,お金が稼げる,とかそんなことよりも,
人間としてしっかりしてるっていう人柄の方がはるかに大事だと私は思ってるんです。
だってどれだけお金稼いでても不倫しちゃったらダメじゃないですか。
スポーツで活躍してても麻薬やってたら一瞬で色んなものを失うわけですよ。
だから,人生においてはそんな人間性をいかに高めていくかが大事だと思ってるんですよね。
最近読んだこちらの本からもそんな人間性の高さの重要性を感じたんですよね。
というのも,こちらは東野圭吾さんの有名な有名な作品なんですが,なんで読んだかっていうと,
あの神戸児童連続殺傷事件を起こした少年Aが「絶歌」を販売する時に,最初幻冬舎から出版される予定だったところを,「もし出版するなら『人魚を~』別の出版社から出す」と東野圭吾さんが迫った経緯があるみたいなんですね。
参考元(https://www.excite.co.jp/news/article/Tocana_201602_post_8929/)
私も「絶歌」という本に嫌悪感を感じて居たので,それを止めるための駆け引きに使われたこの作品はどんなものなのだろうと思って気になって読んでみたわけです。
これがまぁ、面白い。
あらすじとしては,6歳の女の子がプールで溺れてしまって脳死の状態になってしまいます。
しかし,現代医学は電気を流すことによって彼女の筋肉を動かし,発達させていくことに成功します。それを巡る人間模様を描いた作品です。
脳死でもいいから,なんとかして子どもを今のまま生かしていきたい母親…。
脳死した子に電気を流して動かすなんて神への冒涜だと考える人たち…。
あくまで研究の対象としてその子を見る医者…。
脳死した姉を母親が外に連れ出すことで,周囲からからかわれる弟…。
そんな立場によって「瑞穂」という脳死してしまった女の子の見え方が違って,すごく話に奥行きがある面白い作品でした。
そして,この作品の中ではちょっとずつ壊れていく母親の姿が描かれているんです。
母親は娘が脳死してしまったことが受け入れられず,機械で動かして,そのことに満足するんですが、その姿がなんとも不気味に描かれているんです。
周りは今の状態で子どもを生かし続けることを「おかしい」「もうやめよう」っていうけれど,母親は子どもがもう社会的に死んでしまっているという事実を受け入れられない。
最終的には「脳死の子を殺した場合は殺人になるのか?」と包丁を持ち出し,周囲にその存在を認めさせようとするわけです。
そんな母親の姿がちょっとヒステリックに描かれているんですけど,
最終的に東野圭吾はこの母親について,
「子どものために狂えるのは母親だけ」
と書いているんですね。
この一文が凄く優しいなって思ったんですよ。あぁこれが東野圭吾さんがこれだけヒットを続けられている要因かもしれないって。
多分最後まで狂ったお母さん像で終わらせることも出来たんでしょうけど,そうしなかったのは根底にある東野圭吾っていう人の優しさ,人間性なんじゃないかなって。
東野圭吾さんは「書店を守るため」という理由でこれまで電子書籍の発行をしなかったみたいなんですけど,そういう人情味みたいなものがあるからこそこういう人の心に響くヒット作が書けるんじゃないかなって思ったんですよね。
この本から私はそんな人の優しさと東野圭吾という作家の人情味を感じたわけです。
それだけでなく叙述トリックあり,ジレンマを問う問題ありの非常に面白い作品です。
興味のある方いましたら是非どうぞ。
本日も読んでいただき,ありがとうございました!