先日読んだこちらの本のレビューを書きます。
こちらは家族や級友などを巡る人々の「その日」までの日々を描いた短編集。
その日とは「死んでしまう日」を表すわけで,そこに至るまでの家族や友達の葛藤を描いた作品になっております。
なんで今更読んでるかっていうと,好きなんですよ、重松清が。たまに読み返したくなるんです。
最近の流行りの作家さんの本ていうのは、
どんでん返しがあったり,
伏線の回収があったり。
そういう読者のミスリードを誘うエンターテイメント要素が強いものが多いのかなって思うんですけど。
重松清の作品はそういった要素はほとんどなくて,すごく純粋に人間の感情に注目した作品が多い印象です。
そしてその魅力の一つが,余韻の残る言葉選びなのかなって。
この本の中にある,病気で亡くなってしまいそうな奥さんを旦那さんとまだ小さい子ども達が最後に見つめる描写では,こんな言葉が書かれていました。
頼む,神よ,邪魔をしないでくれ。僕の妻は,もう,こんなに透き通ってしまった。
「透き通った」ってなんなんだろう?涙で見えなくなるぐらいぐしゃぐしゃに泣いているのかな?とそんなことを想像させられましたね。
そしてそうやって個人が想像して頭の中に思い浮かべる映像っていうのがやっぱり一番綺麗なんじゃないかなって思うんですよ。
誰にでも平等に迫ってくる大切な人の「死」を考え、今ある日常に感謝したくなる一冊になっております。
ちなみに私が重松清が好きなのは「家族」とか,「学校」とか,「友達」とかそういうものをテーマにしている作品が多いからなんですね。
なんだかそういう共同体みたいなものってもはや「オワコン化」してる現代じゃないですか。面倒だし、出来るだけ離れたいというか。
でもこの人の作品を読むと,やっぱり最後に人が求めるのは「人とのつながり」なんじゃないかなって思えるんですよね。
なんかそういう面倒臭いものも捨てたもんじゃないんじゃないかなって。
もしかしたら私自身がそういう共同体の幻想みたいなものをまだまだ信じていたいのかもしれません。
なんだかたまに引っ張り出してきては読んでしまう作家さんなんですよね。
ということで,GW中の一冊にいかがでしょうか。
他にも重松清のおすすめを何冊か挙げておきます。
どれも家族とか学校がテーマなので,大人から子どもまで楽しんで読める作品になっております。
皆様の読書選びの参考になれば幸いです。
本日も読んでいただき,ありがとうございました!