教職者K

教育について考えるブログ。

低学力の子を引き上げる方法。

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前回の記事で学力格差が格差社会の始まりになっていると書きました。

 

suno200002000.hatenablog.com

 

では今回は具体的にどうその低学力の子達の学力を上げるのかについて書いてみます。

 

学習意欲の低い子達を授業に参加させる方法。

 

その一つが、「あえて難易度の高い課題を出す」です。

 

説明しましょう。

 

学級には通知表で言う1~5の学力の生徒達がいます。

 

いわずもがな

 

5…かなり出来る

4…まぁまぁ出来る

3…普通

2…努力を要する

1…かなり厳しい。(もしくは授業を受けていない)

 

このようなイメージですね。

 

そしてよく言われるのが「中間層に向けて授業をする」というやつです。

 

つまり,一番ボリュームの多い「3」のゾーンの子達に向けて難易度を設定して授業をするというもの。

 

しかし,これには私は反対です。

 

「3」向けの授業では当然のことながら「4」と「5」の子は問題が簡単すぎて力がつきません。

 

さらにいわゆる低学力である「2」「1」の層については普通の問題も出来ないという劣等感を感じることになります。

 

つまり,中間層に向けてやる授業というのは「落ちこぼれ」と「吹きこぼれ」が生まれやすいんですね。

 

低学力対応として「2」「1」レベルの課題をやることも当然上の子達が不満をもってしまいます。

 

「じゃあ1の子は1を、5の子は5のレベルをやればいいのでは?」

 

という考えが出てきます。

 

これがいわゆる個別最適化という考え方ですね。習熟度に応じたクラス分けなどはこの考え方に基づきます。

 

これは人員の確保等,従来の一斉の授業では実現が難しかったのですが、これからICTが発達してくればタブレットを使うことが出来るので、AIが判断して計算や読み書きといったレベルに合わせた問題を出してくれれば基本技能では力を発揮すると思います。

 

しかし、これにも問題があると私は感じています。

 

なぜなら、これでは教室で集まって学んでいる意味がないからです

 

それぞれが自分の課題をやっているので、わざわざ教室で顔を合わせている意味がないのです。(家で出来ますからね)

 

さらに同じ空間で1や2のレベルの子たちが4や5のレベルの課題に取り組んでいる子たちを見たときに、果たして本当にやる気になれるでしょうか。

 

「自分は勉強してもできない」「あんな風にはなれない」今よりもいっそうの劣等感を感じてしまうんではないかと思うのです。

 

なので、ベストは、

 

誰にとっても難しい課題を出すこと。

 

難易度でいうと、「5」を超える「5.5」から「6」ぐらい。それぐらいのちょっと頑張らないと手が届かないような課題を出すことです。

 

「5の子にも難しい課題を出したら、1や2の子はとても太刀打ちできないのでは?」

 

という人もいると思います。

 

その通りなのですが、

 

難しい課題が出された時、初めて低学力の子も意見を求められる

 

んですね。(なんというか周りの子との関係性がちょっと対等になるのです。)

 

難易度が高いと,「君はどう思う?」と高学力の子も解くために周りの力が必要になるわけですね。

 

これが簡単だとすべての問題を4や5の子が総取りして終わってしまいます。

 

しかし問題がハイレベルであるとどの子も自力で解くことができません。

 

必然的に周りの子に助けを求める必要が出てきて、みんなでクリアする必要が出てくるのです。ここで初めて低学力の子も参加することができるわけですね。

 

ヴィゴツキーは『発達の最近接領域』ということを言っています。

 

これは「自力では難しいけど、誰かの協力があればできるかもしれない」という領域が、発達を促す上でもっとも効果的であるという考えです。

 

自分一人で出来ることをいくらやっても能力は伸びないのですね。

 

東京大学名誉教授教授である佐藤学先生はそのようなハイレベルの課題を「ジャンプ課題」としていて,私はその考えに基づいて授業を構成しているのですが,明らかに顔が下がる子が減ったのを感じています。

 

更にハイレベルな問題を用意しなければならないので,こちらも勉強になります。教科書を超えるような課題を常に考えなければならないからです。

 

やっていて思うのが,難しい課題をやっている時,高学力層の子達のアプローチははっきりいって面白くないものが多いんですね。

 

すでに学習していたもの,テンプレート的な文章を当てはめているだけで実は自分の頭で考えていない。

 

そこのところ低学力の子達の発想というのは実に豊かで多様なんです。(いや本当に)

 

けして良く出来た回答ではないんですが,そういう子達が発言した際には高学力の子達からも「面白い!」なんて声も聞こえたりしてきます。

 

このようにハイレベルの課題を設定することによってより多様性のあるアプローチが認められ,それはそのまま生徒の多様性への理解につながっていくのです。

 

なので,「うちのクラスの子は全然勉強しない…」「なかなか顔が上がらない…」そういうクラスほどちょっとハイレベルな課題を出すことをお勧めします。

 

みなさんの参考になれば幸いです。

 

 

本日も読んでいただき,ありがとうございました!